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ナルリスに真希子は何を言おうとしたのだろうか。
-87 不自然に記された秘密-
ナルリスの店で副店長を務める真希子はオーナーシェフに耳打ちで重要事項を伝えようとしたが、本人の声が小さすぎたのかナルリスはまた聞き逃してしまった。
ナルリス「あの・・・、さっきから何を伝えようとしているんです?全然聞こえないんですが。」
何度も何度も聞き返すものの、ナルリスが未だに全てを聞けないままの状態で早くも好美と守が入店して来た。
真希子「まぁ、後で分かる事さね。あら2人共、いらっしゃい、おはよう。」
好美「おはようございます。」
守「・・・。」
真希子「何だい、うちの子は挨拶も出来ないのかい?親として恥ずかしいよ。」
挨拶の無い守を叱る真希子の表情は、1人の立派な母親の表情そのものであった。
そんな中、渚と光親子が住居部分の側にある出入口から入店して来た。すぐさま業務に戻った真希子は挨拶を交わし、2人を席へと案内した。
光「おはようございます、真希子さん。今日は私なんかの為にすみません。」
渚「それにしても本当に私は客として来るだけで良いのかい?」
真希子「何言っているんだい、光ちゃんだけのパーティーじゃないって昨日言っただろう?それに、この店には拉麵屋の女将に出来る事なんて1つも無いよ。」
渚「あんたも「女将」だなんて呼ぶんじゃ無いよ、それにいい意味で失礼しちゃうね。」
その数分後の事、光の元上司で叔父である一が入店して来た。
真希子「あらいらっしゃい、一さん来てくれたんだね。」
一「おはようございます、ご招待頂きありがとうございます。それにしても私なんかが来ても良いんですか?」
真希子「当たり前じゃないか、あんたも家族の一員なんだからね。」
ただ一の姿を見て黙っていなかったのが渚だった。
渚「あんた、店の方は大丈夫なのかい?」
一「勿論大丈夫です、元々休みの日でしたから。それに出勤日だったとしても女将さんがシューゴさんに話を通して休みにするでしょう?」
渚「あんたも「女将さん」はやめな、何回言えば分かるんだい。」
そうこうしている内に美麗や秀斗を含む招待客全員が席に着いて乾杯の時となった、まだ朝の9:00だったが全員気になどしていなかった。
全員の気分が良くなる中、守はずっと気になっていた事を母親に尋ねた。
守「なぁ母ちゃん、何で俺は今日呼ばれたんだよ。」
真希子「ああ・・・、忘れかけていたよ、これこれ。一先ず守、あんたは「端」の物でも「つまんで」いな。」
真希子は懐から一通の手紙を取り出して光に渡した、どういった理由なのか封筒には「必ず守と読む事」と書かれていた。
光「「守君と一緒に読む」ってどう言う事ですか?」
真希子「読めば分かる事さね、開けてみな。」
真希子に勧められるがままに封を開ける光の手を、何故か渚が止めた。
光「何?!」
渚「実はね・・・、私と一さんはあんたに謝らないといけない事があるんだよ。」
光「どう言う事?」
光が不審に思いながら手紙を開けると、とても不自然な形で文字が書かれていた。
あかりちゃん、誕生日おめでとう。
なる君から聞いたけど今日で結婚20周年なんだってね、転生して来
た人間は老けないから歳を取っ
た実感が湧かないよ。
ちいさい頃
はよく守の世話をしてくれてありがとうね、本人はいつも「お
姉ちゃんと遊べて楽しかった」って言ってたんだよ。「走り屋の師」
弟関係になりたい」って言われた時は焦ったけど内心は嬉しかったん
だよ、これからもよろしくね。 真希子
この不自然な手紙は一体・・・。