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どうやら好美からすれば全てお見通しな様だ。
-85 利益をしっかりと考えるオーナー-
デルア達の言葉を予想していた好美は、3人を店舗の裏庭へと連れて行った。そこには副店長も存在すら知らなかったという大きな業務用冷蔵庫があり、先程好美が提供した試作品に使われていた野菜を中心とした材料が保管されていた(と言うより裏庭あったんだな)。
デルア「好美ちゃん、その大量の野菜はどうしたんだよ。光さんの所でこんなに買い付けると輸送費込みで莫大な金額が必要になると思うんだけど。」
『転送』を使って直接光の家から送ってもらうという手もあるのだが、それだと途中でガイの所に立ち寄れなくなる。ガイの作る米は多数の客に定評があるので契約を解除する訳にはいかない、勿論光の所とも同様の事が言えた。
好美「デルアならそう聞いて来ると思ったよ、皆、あそこを見てくれる?」
好美が指差した先には広々とした畑があり、大量の作物が育てられていた。
デルア「まさか、他所で育てた野菜を採って隠したのか?!」
好美「何馬鹿な事言ってんの、ちゃんと結愛に許可をもらって安く売って貰ってんのよ。」
貝塚学園魔学校の寮(好美のマンション下層階)に住む園芸科(あったの?!)の学生達が授業の一環として育てた野菜を店様にと好美が買い付けたのだ、どうやらイャンダも知らない所で結愛に直接交渉したらしい。
デルア「またこんな大量に・・・、使いきれなかったらどうすんのさ。」
前例があり過ぎる案件に再び頭を抱える副店長。
デルア「もう兄貴の所は駄目だって聞いたぞ、それに元から光さんの育てた野菜に拘ってるから尚更だと思うけど。」
デルアの兄であるナルリスは今の店を建てる時、3国の国王達が用意した街の中心部での営業を蹴ってまで光の野菜を使う為の立地に拘っていた。デルアも人づてに聞いた事だが、その強い気持ちは今でも変わっていない様だ。
そんな事を話していると、噂になっていた農家の主である光がガイを連れて様子を見に来た。2人によると週に2~3度、この裏庭に足を運んで生徒達に指導を行っているらしい。各々の仕事もあるというのによくやる、俺なら真似出来る気がしない。
光「どう?私達の教え子たちが作った野菜は役に立ってる?」
ガイ「多少形が悪くても味は同じだから刻んだりしたら変わらないよね。」
デルアが改めて原価等を計算しなおした際に市場価格に比べてやたらと安い理由が分かった、好美が買っていた物は一般的に言う「訳あり品」だった様だ。
好美「どう?私だって頭いいでしょ、それに光さんが指導している生徒達の野菜だから本人達の物に限りなく近いはずだよ。」
開いた口が塞がらないデルアの横でふんぞり返りだした好美、流石はマンションや拉麵屋を経営しているだけはある。
好美は電卓を叩いてデルアに見せた、どうやらこの野菜達を使った時の粗利益高の予算を計算して出したらしい。その数字を見たデルアは固唾を飲んでいた。
デルア「好美ちゃん、マジなの?それを結愛社長がOKしたの?」
野菜の市場価格よりかなり安いので、本当は好美がズルをしたんじゃないかとつい疑ってしまった副店長。
好美「何?疑ってる訳?クビにされたい?」
先程も聞いた気がする言葉だ、ただ「鬼の好美」の圧は凄い。
デルア「す・・・、すみません・・・、何も無いです。」
好美「じゃあこの野菜を店で出して良いよね、大丈夫だよね。」
デルア「料理にしてしまえば大丈夫だから問題無いよ、ただ1度イャンダに相談しないと。」
デルアのこの言葉をも予想していた好美は既に店長に向けて『念話』を飛ばしていた。
イャンダ(念話)「安く・・・、つくんだろ?文句が・・・、ある訳無いじゃないか。」
デルア(念話)「イャン・・・、無理に合わせなくて良いんだぞ。」
好美(念話)「何?文句あるなら改めて聞くけど?」
2人(念話)「い・・・、いや・・・。な・・・、何でも無いです・・・。」
元竜騎士の威厳は何処へやら・・・。