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は・・・、腹減った・・・。
-84 提供した料理は豪華な賄い-
空腹で我慢が出来なさそうにしている秀斗と美麗は好美に導かれるがままに良さげな席に着いて一先ず水を飲んだ、テーブルの端に揃っているメニューを取ってすっかり減ってしまった腹を摩りながら何を食べようか吟味していた。
美麗「好美が言ってたけどこの店のメニューって結構うちの店の影響を受けてるらしいんだよね、やっぱり食べ慣れたものを頼むのが良いのかな?」
秀斗「美麗が言う「食べ慣れたもの」って賄いとかってやつなの?」
美麗「いや、普通に店でお客さんに出してた物と変わらないと思っているんだけど。」
採譜を見ながら悩む2人の元にそろそろ良いかなと思った店のオーナーが近づいて質問した、そう言う意味では好美は空気を読める人間なんだろうか。
好美「2人共、そろそろ決まった?」
美麗「悩むよ、どれも美味しそうなんだもん。」
生前、パソコンが得意だった好美が作った写真たっぷりのメニュー表が2人を惑わせた。
美麗「好美、オススメってある?」
好美「うん、全部。」
よくあるベタな受け答えに思われるが元も子もない様に思われるのは気のせいだろうか。
美麗「全部って困るんだけど。」
好美「だってさ・・・、全部美味しいんだもん・・・。1番ってどう決めれば良いの?」
確かに悩みたくなる時はある、ただ「強いて言うなら」という言葉を出すとどうなるのだろうか。ただ好美が悩む理由を美麗はしっかりと理解していた。
美麗「確か・・・、ここの料理の殆どってパパが作っていた物がベースなんだよね。」
好美「そうなの、龍さんが作っていた物全部が好きだから1番を決めれないのよ。」
元の世界でずっと味わっていた味・・・、好美にとって忘れる事が出来ない味・・・、という事は美麗にとってはある意味「おふくろの味」と言っても過言ではない。
美麗「じゃあ・・・、炒飯にして良い?」
好美「やっぱり?美麗ならそう言うと思ってた。」
世の中では「中華料理は炒飯に始まり炒飯に終わる」という位炒飯は重要な料理と言える、それを忘れない為に毎日中華鍋を振って炒飯を作っていた龍太郎に付き合わされていた美麗は炒飯の味にうるさくなっていた。
美麗「パラパラじゃないと認めないからね。」
数か月前から用途に合わせて使える様に一応IHとガスのコンロを置いて良かったと改めて胸を撫でおろす好美、しかし「松龍」の様な強い火力を出せる代物は無い。
好美「ねぇ、美麗。今度から店でやろうと思っているメニューを味見してくれない?お代は要らないからさ。」
美麗「え?!良いの?!」
待ってましたと言わんばかりに食らいつく美麗、よっぽど腹が減っていたと思われる。ただ好美の言葉をデルアが聞き逃さなかった、勿論店の人間として。
デルア「待てよ、流石にタダで食事をさせる訳にはいかないと思うんだけど。」
好美「良いのよ、元々賄いで出してた料理だし。」
オーナーが持っていた具沢山な料理を見て首を傾げる副店長は不審そうに尋ねていた、これは世の中でいう五目炒飯ではなく何目炒飯なんだろうか。
デルア「そんなの賄いに出てたか?」
好美「デルアがケチだったからいた時は出さなかったのよ。」
デルア「「ケチ」は無いだろう、経費だって限られているんだぞ。」
実は結構余っていた食材を使って賄いを作っていた事が多かった、デルアがケチケチしていたのでイャンダの休日後は特に余っていたのだ。
美麗「結構豪華だけど食べて良いの?」
好美「当たり前じゃない、どうせあとで私が食べようと思っていたんだし。」
秀斗「だからって具沢山過ぎないか?」
いや、賄いにするなら店で売る様に回せよ。




