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実は運転が得意な美麗。
-81 乗り心地等の良さにより-
貝塚学園を後にして、美麗の運転するトラックに揺られていた秀斗は段々と眠気に襲われていた。どうやら美麗自身がこっちの世界での運転に慣れて来た様で、ゆったりとした余裕を持つことが出来始めた様だ。
美麗「ずっとまっすぐだし綺麗な道路だね、異世界に来た実感が全く湧かないよ。」
美麗(と言うか光達を含む転生者達)がこの世界にやって来てからこの世界は大いに発展したと思われる、きっと皆をここに送り込んだビクターも今頃空いた口が塞がらないでいるだろう。
そんな中、ずっと運転席から声を掛けられているというのにも関わらず夢の世界に行ってしまっていた秀斗はいつの間にか恋人の機嫌を損ねてしまっていた。
美麗「良い御身分だよね、彼女に運転させてぐっすり眠っちゃってるなんてさ。」
不機嫌そうな美麗の声でやっと目を覚ました秀斗は、眠い目を擦りながらより一層目を覚ます為に強炭酸水に手を延ばした。
秀斗「ご・・・、ごめん。それで・・・、何の話だっけ。」
慌てて乱れた前髪を整えながら美麗に質問する秀斗。
美麗「あのね、秀斗の荷物をトラックで運んで来るって好美に昨日行った時なんだけど、この前改修工事を行ったエレベーターを試しに使ってみて欲しいって言ってたのよ。だからマンション1階の店舗部分前で荷物を降ろしていこうと思うんだけど大丈夫かな?」
秀斗「美麗がしやすい様にやってくれて良いよ、ただでさえ運転してもらっているんだから我儘言えないよ。」
申し訳なさそうな表情を浮かべながら後頭部を掻く秀斗、信号待ちをしていた美麗はそんな彼氏を睨みながら残ったコーラを飲み干した。
美麗「何よ、さっきはグースカ寝てたくせに。」
秀斗「本当に悪かったよ、飯奢るから許してくれよ。」
美麗「当たり前でしょ、ずっとお酒も我慢しているんだからビールもご馳走して貰うんだからね。」
秀斗「わ・・・、分かりました・・・。」
運転席から感じる圧につい委縮してしまう秀斗、元柔道部員でも女の子にはタジタジになってしまう様だ。
秀斗「それはそうと、好美ちゃんに挨拶しなくても良いのかな。大家さんだからお世話になる訳だからね。」
美麗「確かに反対はしないんだけどさ・・・。」
何かを思い出したかの様に少し焦った表情を見せる美麗。
秀斗「「反対はしないけど」・・・、何?」
美麗「明日でも良いんじゃないかな、今夜夜勤って聞いてるから起こすと悪いし。」
秀斗「確かにそうだけど、他に理由がありそうな言い方だな。」
美麗の心中を察した秀斗は恐る恐るその訳を聞いてみる事にした。
秀斗「良かったら聞かせてくれない?一応、念の為・・・。」
美麗「良いけど、寝ないでよ?」
まだ恋人の事を信用できない美麗、その表情を見た秀斗は慌てて『アイテムボックス』から黒い粒ガムを数粒取り出して一気に口へと放り込んだ。
秀斗「ほひ(よし)・・・、ほへへはいほうふは(これで大丈夫だ)。」
美麗「何よ・・・、ガムなんかに頼っちゃって・・・。」
秀斗の行動によりまだ不機嫌さを残す美麗は、信号が青になったのでギアを「2」に入れてトラックを発進させながら語り始めた。
美麗「えっと・・・、いつの事だったっけ・・・。」
美麗がなかなか思い出しそうにも無いので俺の方から語ろうと思うのだが良いのだろうか、いや2人の会話に割り込むのはちょっとあれかもな・・・。
美麗「何考えてんの、ちゃんと思い出すもん。失礼な事言わないでよ。」
す・・・、すんません・・・。




