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秀斗には気になって仕方が無い事があった・・・。


-78 社長も聞かされて知った母の記憶-


 ヒドゥラによるトラックの改造作業が進む中、秀斗はあの「株主総会」以来気になっていた質問を巨大財閥の社長にぶつけた(そう言えばこれ、異世界での話だったな)。


秀斗「なぁ結愛、ずっと分からんかったんだがな、俺達は親戚だってのにどうしてあの「株主総会」まで会う事は無かったんだ?」


 秀斗の質問に頭を悩ませていた結愛は、ゆっくりと重い口を開いた。


結愛「そろそろ聞かれると思ったぜ、何処から話せば良いんだ?」

秀斗「どんな事でも構わねぇ、知っている事を俺にも聞かせてくれるか?」

結愛「そうだな・・・。」


 再び深く考え出す結愛、何とか自分が秀斗に話せる真実は無いかと記憶を必死に辿っていた。


結愛「実は俺・・・、母親の顔を知らねぇんだ。まだ小さいガキだった海斗も覚えていないって言ってたよ。」

秀斗「そうなのか?」

結愛「ああ。これは洋子おばちゃん、つまりお前の母ちゃんから聞いた話なんだけどよ。」


 結愛や海斗が産まれる数年前の事、かつてよりギャンブルやキャバクラへの依存により父親が残していった借金を抱えていた羽柴莉子(後の貝塚莉子:海斗と結愛の母親)・洋子姉妹は4畳半の古いアパートで2人暮らしをしていた。

 丁度その頃、莉子が借金返済のためにバイトで働いていたスナックの客としてやって来たのが当時専務取締役をしていた義弘だった。

 当時の義弘は貝塚学園を設立した頃とは真逆で、周囲への心遣いも忘れず、皆に好かれる性格だったという。


義弘(当時)「お父さんの借金を返す為にここでアルバイトを・・・、それは大変ですね。」


 社長兼理事長だった時の義弘と同一人物とは思えない台詞だ。


義弘(当時)「それで・・・、洋子さんでしたっけ?妹さんも弁当屋で昼夜働いていると。」

莉子(当時)「はい、元々は5時間のみでの契約だったのですがお店の人に無理言って8時間にして貰っているんです。私は私で午前中は別の工場で働いているので、共同で住んでいても会う事は殆ど無いに等しいですね。」

義弘(当時)「休日も無く・・・、という感じですか?」

莉子(当時)「そうですね、家には寝る為だけに帰っている様なものですよ。」


 莉子は冗談を言う様にクスクスと笑いながら自らの日常を話していた。


義弘(当時)「因みに・・・、その・・・、差し支えなければなんですが、例のお父さんは?」


 持っていたウィスキーのロックを一気に煽る莉子、度数37%の酒はかなりキツめだと思われるが大丈夫なのだろうか。


挿絵(By みてみん)


莉子(当時)「知りませんよ、あんな男。洋子が産まれる寸前で他に女作って出て行ったって聞きました、母さんだって私達が幼少の頃に死んじゃいましたし。」


 莉子も生前の祖父母に聞いた話だったが姉妹の父親は昔から酒と女癖が悪く、結婚してから何度も何度も不倫を繰り返していた様だ。そんな旦那に愛想を尽かせた2人の母親が自分1人で何とか子供を育てようとしたが、過労でこの世を去り、莉子たちは養護施設で育ったのだという。

 莉子から過去の話を聞いた数か月後、同情した義弘が莉子の働く店に花束を持ってやって来た。


義弘(当時)「莉子さん、こんな私で宜しければこれからの貴女の人生を幸せにするお手伝いをさせて下さい。」


 この一言に涙が止まらなかった莉子は当然の様にプロポーズを受けたという。

 それから暫くして2人の間に兄の海斗が産まれ、その1年後に結愛が産まれた。そこまでは良かった、ただ義弘は娘が誕生してからすぐに貝塚財閥の社長に就任したが正直言って会社の羽振りはそれ程よくなかったので義弘は自宅でなりふり構わず暴れ回っていた様だ、そんな生活が嫌になった莉子が義弘に離婚を迫り、一応受諾はされたが金の力を行使した義弘が兄妹の親権を無理矢理奪い取って莉子を家から追い出したのだという。洋子も姉に替わり2人を育てると志願したが、裁判所の命により叶わなかったらしい。


結愛「これが・・・、俺が知っている全てだ。俺には・・・、俺達には母親との記憶や思い出が無い。全て・・・、あのくそ親父の所為だ・・・。」


今でもなお、義弘への憎悪が残る結愛。

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