77
懐かしいが思い出したくもない「あの時代」での事。
-77 別視点から見た「あの会議」-
これは義弘による「最悪の高校時代」が終わりを告げ、結愛が貝塚財閥の代表取締役社長となるきっかけになった緊急株主総会での事。
持ち株が決して多かった訳では無かったが、貝塚財閥の株主の1人として財閥のこれからをちゃんと見ておこうと思った洋子は社会勉強の一環になれば良いと考え、秀斗を引き連れて総会に出席した。
洋子(当時)「良いかい?今から行われる会議でこの会社の、そしてあんた自身の歴史が大きく動くかもしれないからその瞬間をよく目に焼き付けておくんだよ。」
ただ、食べ盛りであった当時の秀斗は夕飯の事しか頭に無かった様だ。
秀斗(当時)「母ちゃん、ここ何なんだよ。腹減ったよ、唐揚げ食わせてくれよ。」
洋子(当時)「あんたね、何恥ずかしい事を言ってんだい。馬鹿な子に食わせる唐揚げなんて作り方も私ゃ知らないね。」
そんな中、会長である結愛の祖父の博が登壇した。
博(当時)「おはようございます、皆様本日はお集まりいただきありがとうございます。只今より緊急株主総会を開始いたします。尚、この場に私の愚息が居ないのはその愚息について話し合う場だからです。」
会長の挨拶の後、義弘派閥の株主たちから反発の言葉が行き交いステージ上のスクリーンに映像が流れていた頃に秀斗の腹の虫が大きく鳴った。
秀斗(当時)「母ちゃん、俺我慢出来そうにねぇよ。」
洋子(当時)「良いから黙って見てな、あんたもテレビのニュースを一緒に見ていたんだから貝塚学園で起きた一連の事件を知らなかった訳じゃ無いだろ?」
当時の洋子は状況を逐一把握するために夕飯時は必ずニュース番組を見る様にしていた、ただ秀斗は退屈さだけを感じていた様だが。
秀斗(当時)「あんなの俺が見ても仕方なかったと思うんだけどな、ハッキリ言って俺はこの場にいるべきなのか?」
洋子(当時)「あんたは本当に馬鹿だね、ここにいる意味はこれから分かるんじゃないか。」
ステージ上にいる議長が義弘派閥の2人が反対したので社長解任決議案を否決にしようとした瞬間、真紅のスーツに身を包んだ真希子が浜谷信二達を引き連れて登場した。
真希子(当時)「待ちな!筆頭株主の私を放っておいて勝手に総会を終わらせようとしているんじゃないよ!」
洋子(当時)「ほら見てみな、救世主のお出ましだよ。」
洋子は人生でこの上ない位に興奮していた、どうやらこの瞬間を待ち望んでいた様だ。
信二(当時)「さて、本題に入りましょうか。義弘さんに学校の土地と権利を譲っておくれと言われた時はこんな事態になると思ってなくて私が判断を見誤ったが故に起こった事です。私が発端とはいえ義弘さんがした事は決して許されることではありません。」
真希子(当時)「株主の皆さん、よく考えて下さい!あなた達も人の子で親でしょう、安心して子供たちを預けることが出来る学校を取り戻すべきではないでしょうか、そして守るべきではないでしょうか。それに子供たちのお手本となる教員、勉学を教える講師となる投資家への贈収賄。全て踏まえ、もう1度問います。私たちの子供達から安心できる学校を奪った義弘をあなた達は許しますか?!」
洋子(当時)「いよいよだ・・・、歴史が動くよ!!」
議長(当時)「貝塚義弘社長解任決議案に賛成の方・・・。」
真希子や信二、そして洋子達が一斉に挙手して義弘が解任されて一時的に全権を奪取していた結愛が次の社長へと任命された。
そうして幕を閉じた緊急株主総会から数分後、大会議室の出入口付近で洋子は結愛を見つけて強く抱きしめた。
洋子(当時)「結愛ちゃん、今までよく我慢したね。まだ高校生なのに本当に頑張ったね。」
結愛(当時)「洋子おばちゃん、来てくれたんだな。本当にありがとよ。」
秀斗(当時)「えっ・・・?!どう言う事だよ?!「洋子おばちゃん」って?!」
当時の秀斗は目の前にいた新社長が自分の親戚だった事をまだ知らなかったのだ。
洋子(当時)「今更何言ってんだよ、この子の母親は私の姉なんだよ。「おばちゃん」って呼ばれて当然じゃないか。」
秀斗(当時)「俺が・・・、貝塚財閥の関係者・・・?!」
どうして今更発覚した?