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救世主とは誰だったのだろうか・・・。
-76 便利な体と親戚同士の再会-
ガス欠しかけのトラックの前に戻って来た恋人達の前に再び現れた社長はある従業員を後ろに連れていた、ただその従業員は結愛と同様にパンツスーツを着た女性だったが右手には工具らしき物を持っていた。
結愛「すまねぇ、待たせたな。」
秀斗「良いけど結愛、業者さんでも呼んだのか?それともまた別の従業員の人でも来る訳?」
結愛「いや違うぜ、後ろにいるこのヒドゥラが作業をしてくれるそうなんだ。」
結愛がそう言うと、先程から同行して来た女性従業員が1歩前に出て自己紹介した。
ヒドゥラ「社長秘書のヒドゥラと申します、結愛社長のご親戚の方とお伺い致しました。喜んでお手伝いをさせて下さい。」
秀斗「社長秘書さんが自動車整備を?」
ヒドゥラ「はい、実は私の実家が自動車の整備工場ですので1通りの資格は持っているんです。」
美麗「凄い方なんですね、でもスーツ汚れませんか?それに荷物を載せてるから整備用に高く持ち上げたらまずい気がするんですが。」
ヒドゥラ「大丈夫です、ご安心下さいませ。」
ヒドゥラは美麗の質問に答えると『人化』を解除し、半身が蛇である元々の姿に戻ってあっという間に車両の下に潜り込んでしまった。
秀斗「え?!ここでするんですか?!」
ヒドゥラ「はい、では早速やっちゃいますね。」
そう言うと目の前のラミアは慣れた手つきで作業を始めた、エンジンスタートに関する整備作業なので真下に積んであるエンジンの方から手を付けていく様だ。
結愛「凄いだろ、直接採用面接をした訳じゃ無かったから俺も最近まで知らなかったんだけどさ、この前光明の車の事で相談したらすぐに修理してくれたんだよ。」
社長の言葉が聞こえたのか、トラックの中から秘書の声が聞こえて来た、ただ本人が何処にいるのかは外からは皆目見当もつかなかった。
ヒドゥラ「自動車整備は朝飯前というか趣味みたいなもんですからね、こうやって車の中に潜り込んでいると何だか楽しくなっちゃうんです。」
そう語りながら作業を進める秘書に結愛はさり気なく、ただ結構重要な案件を伝えた。
結愛「ヒドゥラさん、今度新規事業として立ち上げる貝塚運送での社用車整備担当を貴女にしようと考えているんですけど良いですか?」
ビジネスでの事案なので一応「大人モード」で話しかける社長。
ヒドゥラ「社長、いつも私にはその口調じゃないでしょ。気持ち悪いから戻って下さい。」
作業をしながらもしっかりと上司の声を聞いていたヒドゥラ、仕方なしだが結愛は言われた通りいつも通りの口調に戻した。
結愛「ヒドゥー、貝塚運送の社用車の整備をお前に全部押し付けて良いか?」
ヒドゥラ「結ちゃん、「押し付ける」って何なのよ。人聞き悪いじゃない。」
2人の会話の様子はまるで休日を共に過ごす友人同士みたいなものだった、社長と秘書の関係は他の人がいる時だけにしているのだろうか。
結愛「すまねぇが2人共、この事はここだけの話にしておいてくれないか?特に光明に見つかったらめんどくさい事になっちまうからよ。」
確かに結愛以上にマナー等に厳しい光明が今の2人の様子を見たらどう思うのだろうか、ハッキリ言って美麗には想像も出来なかった。
美麗「見なかった事にしておくよ、それにしてもヒドゥラさんがさっき言ってたけど2人は親戚だったの?」
結愛「いとこ同士なんだよ、ただ互いに違う県に住んでたから久しく会ってなかったがな。」
秀斗「いつ以来だったかな、お前と会うのって。それにスーツなんてキャラだったか?」
結愛「確か・・・、高校時代に株主総会で会って以来だったよな。あの時は親父に着せられてた服が嫌で嫌で仕方が無かったから今は最高の気分なんだ。」
秀斗も母・洋子が貝塚財閥の株主の1人だったので母と一緒に会議に出席していた。
結愛と秀斗の大きなつながりの理由・・・。