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社内情報の守秘義務を必死に守ろうとするリンガルス。
-75 旦那にも言っていない秘密-
何も考えずに2人を結愛のいる社長室へと案内すればいいはずのリンガルスの様子は何処か変だった、ずっと2人の前で頬をかいてばかりだったのだ。
秀斗「「ですが」・・・、って何ですか。案内して頂ければ済む話じゃないですか。」
秀斗が言っている事は正論だ、リンガルスも否定している訳ではない。
リンガルス「確かに仰っている通りなんですがね、実は・・・。」
美麗「「実は・・・」、何ですか?」
入学センター長兼バルファイ王国警察警部の様子はどう見ても異常だ、ただその理由が分かったのはすぐの事だった。
リンガルス「もうこちらに理事長が来ているんですよ・・・、多分。」
秀斗「何で「多分」なんです?」
本当にリンガルスが言う通り結愛がこの場にいるのなら2人の目の前にいてもおかしくはない、しかしリンガルス自身もまだ分かっていない状態だった様なので2人は辺りを見廻して見たが3人以外部屋には誰もいなかった。
美麗「貴方は先程から何を言っているんです?私以外いないじゃないですか。」
秀斗「俺達引越し作業の途中で困っているから来たんです、ふざけないで頂けますか?」
リンガルス「いや・・・、私だってこうしたくはないんですがね。「そろそろ」かな・・・。」
そう答えたリンガルスは不安そうになりながら部屋の隅にある膝位の高さの小さなドアを開けた、中から金庫みたいにダイヤルが付いた重厚な扉が現れた。
その様子を見た秀斗はより一層苛立ち始めた、しかし冷静になる為に自分の頬を抓って我慢した。
秀斗「あの・・・、俺達金が欲しい訳ではないんです。結愛に用事があるから会いに来たんですけど。」
リンガルス「存じております、ただもう少々だけ・・・。」
そう言うとドアを2回ほど優しくノックした後にダイヤルをゆっくりと回し始めた、ドアの見た目のせいか宝物が出て来そうな雰囲気と静寂が辺りを包み込んでいた。
数秒後、「カチッ」という音と同時に扉の鍵が開いたのでリンガルスが扉を開けると、中には電灯で明るく照らされた空間が広がっていた。中の見た目は金庫そのものと言うよりまるで「応接間」の様になっていて、高級そうな椅子とテーブルが並べられていた。
リンガルス「あれ?いないな・・・、とりあえずこちらでお待ち頂ければ大丈夫と思いますので。」
リンガルスは2人を部屋に案内すると1人外へ出てまた鍵をかけてしまった、このままだと部屋から出ることが出来ない。2人は意味も無く捕まってしまったのだろうか、それとも結愛が来るまで脱出ゲームでもやってろと言うのだろうか。
そう思いながら数秒が経過した後、結愛が『瞬間移動』して部屋へとやって来た。
結愛「2人共待たせて悪かったな、それにしても本当に秀斗なんだな・・・。」
秀斗「お前もこっちの世界にいるとは聞いてたけど本当とはな、世間って狭いんだな・・・、って言っている場合じゃないだろ!!この部屋何だよ!!外から鍵閉められたぞ!!」
結愛「ここはな・・・、俺しか使わない隠し部屋なんだよ。」
実はこの部屋、結愛自身が人事等を中心とした業務について1人で集中して考えたり突然の来客(特に友人)があった時に使う為の物だったのだ。因みに、副社長である旦那の光明はこの部屋の存在を知らない。
結愛「それで・・・、本当に美麗もこっちに来たんだな・・・。えっと・・・、例のトラックは外に止めてんのか?」
美麗「この建物の前だけど。」
結愛「分かった、じゃあ建物前まで送るから外で待っててくれるか?」
結愛はリンガルスに『念話』を飛ばした後で部屋の外、そして建物の前まで2人を案内した後で『瞬間移動』で社長室へと向かった。
秀斗「あいつ「何とかする」って言ってたけど自動車整備とか出来るイメージ無いんだけどな・・・。」
美麗「そうだね、私も聞いた事ないかな。」
2人がそう話していると、噂の社長は1人の従業員を連れて戻って来た。
結愛が連れて来た従業員とは・・・?