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やはり異世界と言う実感が湧かない世界。
-74 移動に車が必要な位の巨大な学園-
まるで日本の高速道路みたいにバルファイ王国からネフェテルサ王国へと延びる舗装された直進道路の路肩で、美麗が買って来た飲み物で一息ついた2人は改めてトラックに乗りこんで貝塚学園へと向かった。秀斗が言うには結愛が話を付けておくので先程の電話で話したリンガルス入学センター長の所に行って欲しいとの事だ。
車両をUターンさせた美麗は秀斗の案内で学園の校門へと向かい、大きな校門の隣にある守衛室らしき小さな建物の前に車を止めた。
美麗「ここが・・・、異世界の学校なの?」
秀斗「貝塚学園魔学校だよ、高校と大学、あと貝塚財閥本社が併設されているんだけど改めて見ると広くて建物がデカいな・・・。」
東京ドーム約70個分の敷地に魔法大学各学部の講義棟、そして高等魔学校の校舎や部活棟に共通体育館等が建ち並んでいた。
引越しの荷物を載せたままなので校舎前の運動場で体育の授業を受けている高校生と思われる女子生徒達から目立って仕方がない、その内の2名がこちらへと視線をぶつけて来ていたので尚更だったが体育教師の一言で授業へと戻って行った。
生徒①「誰だろ・・・、あんなに沢山荷物持って大学に用事がある人達かな。」
生徒②「この辺では見かけない人たちだね・・・、転生者とか?」
生徒①「母さんに帰って聞いてみようかな、この辺の事詳しいはずだから。」
体育教師「おーい、ダルランとチェルド!!何をじぃ~っと見てんだ、集合だからすぐに戻って来~い!!」
生徒②「まずい・・・、アイツうざいから早く行こう。」
生徒①「そうだね、走ろうか。」
そんな中、美麗と秀斗は未だに生徒達からの視線を感じながら守衛室内にいる男性に声を掛けた。
美麗「あの・・・、すみません・・・。」
男性「お待たせいたしました・・・、恐れ入りますがどちら様でしょうか?うちは配送業者では無いのでそんなに多くのお荷物をお持ちになられましても困るのですが。」
秀斗「いや、そういう訳じゃなくてですね。えっと・・・、入学センターのリンガルスさんに用があるんですが。」
男性「そうですか、失礼致しました。先程入学センターにいるリンガルスから連絡があったんですよ、貴方達の事でしたか。」
美麗「突然の訪問ですみません、それで入学センターはどちらでしょうか?」
男性「入学センターですね、ご案内致しますので少々お待ち頂けますか?」
男性は建物の奥にいる別の男性に話をつけて、鍵を片手に建物から出て来た。
男性「こちらも車でご案内致しますので、お車に乗ったまま後ろに御同行ください。」
そう一言告げると、近くに止めてあった軽トラへと乗り込んでハザードを点滅させながら2人の乗るトラックの前をゆっくりと走りだした。美麗がその後ろをただただついて行くと、校舎と思われる建物の間を縫うように張り巡らされた道路を進んで行くようだった。
それから5分程走っただろうか、男性のは敷地内で一番高い建物の前に停車して2人の下に近付いて来た。
男性「運転お疲れ様でした、こちらが貝塚学園本部でございます。こちらの1階になります、では私はこれで。」
男性は再び軽トラへと乗り込むと先程来た方向へと戻って行った、2人はトラックから降りて建物へと足を踏み入れた。
秀斗「入学センターね・・・、何処だろう・・・。」
美麗「秀斗、あそこに案内板があるから見てみようよ。」
美麗が指差した方向に目線をやると、そこには2人が今いる1階から結愛のいると思われる社長室がある最上階への詳しい案内が記されていた。
美麗「入学センターは・・・、そこの2番目のドアだね。」
2人は案内に従って誰もいない廊下を歩き、2番目のドアを開いて中に入った。部屋の奥でリンガルスが1人ゆっくりと香りを楽しみながら鼻歌交じりで珈琲を淹れていた。
秀斗「すみません・・・、リンガルスさんはいらっしゃいますか?」
リンガルス「ああ・・・、先程のお電話の方ですね?お待ちいたしておりました、理事長の貝塚からお2人をご案内する様に申し付かっておりますのでご一緒にと言いたいんですが・・・。」
様子がおかしいリンガルス、やはり結愛は只者ではない。