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73

美麗はトラックのハザードを点滅させつつ、暇な時間を過ごしていた。


-73 代替品として渡された好物の記憶-


 スマホで結愛に状況を報告している秀斗の隣で、恋人からの指示でトラックを路肩に停車していた美麗は退屈になったので車両から降りて近くの自動販売機へと向かった。


美麗「喉乾いちゃった、秀斗もずっと喋ってるから暇になっちゃったよ・・・。」


 車両を止めた場所よりゆっくりと歩きながら懐から財布を取り出して小銭を入れていた場所を開けた美麗、中身を確認すると100円玉が4枚入っていた。

 実はと言うとこれは美麗が元の世界にいた時からいつでも水分補給が出来る様にと必ず行っていた事で、この世界でも役に立ったので過去の自分の習慣が功を奏した様だ。


美麗「そうだ、秀斗の分も買っておこうかな。えっと・・・、コーラと強炭酸水を買っておいたら大丈夫だよね。」


 先程の秀斗もそうだがいつの間にか互いの事を名前で呼ぶようになっていた事は触れない様にしておくとして、ただ今更ながら美麗には少し不安になっていた事があった。


美麗「そう言えば私、日本のお金しか持って無い・・・。どうしよう・・・。」


 ビクターにより日本円でそのまま買い物が出来る様にこの世界自体が作り替えられている事を未だに理解しきれていない美麗は、恐る恐る小銭を自販機に投入していった。

 当然の様に反応した自販機は「ピッ・・・」と言う音を出し、「ガシャン・・・」と言う音と同時に飲み物を吐き出した。


美麗「良かった・・・、普通に買えるじゃん。助かる・・・。」


 安心して路肩に止めているトラックに戻ろうとする美麗に、秀斗が車両の窓から顔を出して優しく声を掛けた。


秀斗「美麗、結愛に話がついたからすぐそこの貝塚学園に行こうか。車を回して貰っても良いかな?」


 決して上から命令する様にではなく、飽くまで下手に出て優しくお願いする形を取る秀斗。そのお陰で美麗も気持ちが楽になって色々とやりやすくなっていた。


美麗「ねぇ、その前に喉乾かない?ジュース買ってきたよ。」

秀斗「え?ビールは無いの?」


 流石にまだ引越し作業自体が終わって無い上に、美麗自身が運転中なのでまだビールはお預けと言っても良い状況だ。


美麗「ビールなんて持って無いよ(そうそう、後で後で)、持ってたら私が呑んでるって(馬鹿か、お前は)。」

秀斗「冗談だよ・・・、引っ越し作業が終わり次第だよな。」

美麗「引越し蕎麦と一緒に呑む予定だからそれまで我慢だよ、それでどっちにする?」


 秀斗は美麗が右手に持っていた強炭酸水を選ぶと夏のビアガーデンでビールを楽しむ会社員の様な勢いで一気に煽った、強めの炭酸が体に流れ込む・・・、すると・・・。


秀斗「はぁ・・・、これが一番決まるわ。」

美麗「やっぱりね、秀斗ならこっちを選ぶと思った。」

秀斗「美麗・・・、覚えててくれたんだ。」

美麗「当たり前じゃん、うちの店でランチタイムにいつも強炭酸水ばっかり飲んでたから覚えたくなくても覚えちゃうって。」


 2人がまだ学生だった頃、テレビで「炭酸水が体に良い」という事を見かけた王麗の発案で客たちの健康を気遣い店で扱い始めた事をきっかけに、秀斗はランチを食べに「松龍」へ来ると必ず炭酸水を飲んでいたのだ。美麗は大学の授業が休みだった土日、ランチタイムで店の手伝いに入っていた時に秀斗が毎回炭酸水を飲んでいた事をずっと見ていた。

 ただ、当初は「強」が無かったので・・・。


秀斗(当時)「ねぇ、女将さん。強炭酸水は無いの?」

王麗(当時)「炭酸水自体試しなんだよ、そんなに強いのが欲しいのかい?」

秀斗(当時)「刺激が欲しいんだよ、良かったらおいてくれない?」

王麗(当時)「分かったよ・・・、じゃあ今度試しに卸業者に頼んでみるね。」


 そう、この2人の会話をきっかけとして新たに「強炭酸水」が置かれるようになったので嬉しくなった秀斗はランチタイムにずっと「強炭酸水」を飲んでいたのだ。


挿絵(By みてみん)


美麗「正直、店で「強」を頼んでいたの秀斗と数人だけだったんだよ。そりゃ覚えるって。」


美麗にとっては大切な秀斗との記憶・・・。

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