706
そんなに不安にならなくても・・・
-706 単純な理由-
副店長が作った「マニュアル」を基に行われている調理が順調に行われている中でもやはり本人は浮かない表情をしていた、それどころか作業がどんどん進んで行くに連れて表情がどんどん酷くなっている様な気がするのだが・・・。
料理人②「やっぱり大丈夫なんかな・・・、気になってしゃあないんやけど。」
料理人①「どうなんやろうな、でも誰にだって聞かれとうない事位あるだろうし。」
料理人②「そうよね・・・、だから私達は私達が出来る事をやるだけなんやけど。」
正しくその通りである、しかし同じ女性として「何とかしてあげたい」という気持ちが無いと言えば嘘になってしまう(それより何で同族同士の時だけ似非関西弁になるんだ)。
そんな中でも板長は用意されていた魚をどんどん3枚に卸していく、まるで「気にしない方が本人の為だ」と言わんばかりに。
ピューア「やはり板長は元々寿司職人だったので魚を捌く事に関してはプロですよね、これだったら朝ごはん用の魚を丸物の状態で仕入れても問題無いですよね。」
ヴィンゲル「改まって何を言ってんのよ、元々あんたに魚の捌き方を指導したのは私でしょう?」
ピューア「そうでした、元々料理の世界に私を導いてくれた人が別にいるのでその人とごっちゃになってたんだと思います。」
ヴィンゲル「それはそれは良い方に出逢った様ね、親として挨拶しないと。」
改めて言う事でも無いのだがこの魚龍はこの上級人魚の親ではない、しつこい様だけど念の為。
ピューア「そうですね・・・、「人生の師匠」と呼んでる方ですから。」
ヴィンゲル「という事は本当のご両親という事かしら、是非お会いしてみたいわ。」
ピューアの言った「人生の師匠」とはネフェテルサ王国にあるレストランで副店長をしている貝塚財閥筆頭株主の宝田真希子の事、両親の片方という訳では無い。
ピューア「お恥ずかしながら・・・。」
ニクシーは昔銀行員として働く事になった際に実家であるトンカツ屋を飛び出した事、そして真希子に出逢うまではずっとカップ麺ばかりを食べていた事を暴露した。やはりピューアにとって真希子の存在はかなり大きい物だったと言える、愛車を譲り受けた事もその結果だと言えるだろう。
ヴィンゲル「そうなのね、でもご両親がいたから今の貴女がいる事を絶対に忘れちゃ駄目。これは元師匠として貴女に教えておくわ。」
ピューア「はい・・・。」
ヴィンゲル「それにご実家へと研修に向かわなかったらこの「マニュアル」も出来上がらなかったんでしょう、より一層ご両親の存在が大きい物になっているんじゃない?」
この「マニュアル」は自分が徹夜して作成した物だ、しかし父・メラルークから学んだ事が基となっている事も事実。
ピューア「そう・・・、ですね・・・。」
ヴィンゲル「それにしてもこの「焼き鮭のお握り定食」は私も食べたくなっちゃう物ね、これもご実家で出していた物なのかしら?」
ピューア「元々はそうです、しかし私は「そのまま」を出す為に実家に行った訳では無いので少しアレンジを加えています。」
ヴィンゲル「あら、立派な事を言うじゃない。私の知らない所で大分成長したみたいね。」
ピューア「そう見えるなら嬉しいです・・・、頑張って来て良かった・・・。」
少量だが涙を浮かべるニクシー、しかし先程の「「そのまま」を出す為に実家に行った訳では無い」という言葉は女将に言われたばかりでは無かっただろうか。
ネイア「余計な事を言わないの、折角良い雰囲気になっているんだから!!」
すんません・・・、静かにしてます・・・。
ヴィンゲル「そう言えば「焼き鮭のお握り定食」とは別に「焼き鮭ハラスのお握り定食」を提供するのは何かの拘り?値段が全然違うみたいだけど。」
「忘れない内に」と「マニュアル」に提供する際の原価と売価を書いていたので生じた疑問の様だ、しかし俺からしても「気にならない」と言えば嘘になる。
ピューア「それは・・・、ただ私がハラスの部分が好きなだけでして・・・。」
ヴィンゲル「ただの好みなの?!子供みたいね!!」
シンプルでいいんじゃない?




