69
夜勤明けが何となく恐ろしい・・・。
-69 工事現場で-
「酒」という言葉にすぐさま反応した好美、相も変わらずこの世界は呑兵衛だらけだ。
好美「呑み放題?!呑み放題?!勿論、呑み放題だよね?!」
あまりの喰らい付き様についタジタジしてしまう社長。
結愛「分かったよ、分かったからちょっと下がって涎ふけ。」
翌日、例の駐車場にて貝塚財閥が契約した業者による工事が始まった。元々舗装はされていたが、学園のバスを止める為に白線を塗り替えないといけない上に所々穴が開いていたのでライカンスロープ達も大助かりの様だ。
工事後の完成予定図を見せながら、今回の工事の為に駆け付けたゴブリン・キングのブロキントが特別現場監督として結愛に説明をしていた。
ブロキント「一応、奥の方の区画を広めに取って止めてたバスを動かしやすくしようと思うとる算段です。手前を中型のトラック等を止めるスペースにしてお互いに使いやすい場所出来ればええかなと計画してます。」
結愛「成程・・・、因みにあそこの小屋は何のために?」
ブロキント「ヤンチさん達の要望で管理人室を作る事になりました、また今度採用面接を行うって聞いてますけど。」
結愛「そうですか、ではこちらも何か協力出来る事があれば仰ってくださいね。」
大切なビジネスの場なので「大人モード」で対応する結愛、しかし好美の出現をきっかけにすぐにいつも通りの状態に戻ってしまった。
好美「結愛、どう?工事は進んでる?」
結愛「ああ・・・、好美か。うるさくしてすまねぇな。」
好美「いや、住民の人達からはクレームが出ている訳じゃないから良いけど・・・。」
頬を掻きながら照れる好美を見て不思議そうにしている結愛。
結愛「「けど」・・・、何だよ。」
好美「結愛ってさ・・・、ヘルメット似合うよね。」
結愛「何だよそれ、何か嬉しくねぇんだけど。」
ブロキント「ハハハ・・・、結愛社長は本社でおるより現場を見て回る事が多くなってきましたんでヘルメット姿も様になって来たんとちゃいますか?」
結愛「何だよ、ブロキントまでからかってんじゃねぇぞ。」
勢いに乗ってブロキントにまでいつも通りの対応をしてしまう結愛、先程までの「大人モード」は何処へ行ってしまったのだろうか。
そんな中、土地の所有者達が差し入れを手にやって来た。
ヤンチ「皆さん、お疲れ様です。」
ケデール「工事は進んでますか?」
結愛「あら御兄弟で、わざわざすみません。」
時計の針も丁度正午を指し示していたので現場監督が現場の作業員を呼んで集めた。
ブロキント「皆、弁当が来たで。少し早いけど昼休みにしよか。」
監督の言葉で一斉に集まりだす作業員、重労働によりかなり腹が減っていた様だ。
好美「因みに中身は何なんです?」
ヤンチ「焼肉サンドですよ、俺とケデールの店での仕込みで出た端材をタレで炒めて弟の店から仕入れた食パンに挟みました。食感を楽しんでもらえる為に瑞々しいレタスを一緒に挟んでいます。多めに作って来たんで良かったらお二人もいかがですか?」
2人はヤンチから受け取った弁当箱の蓋を開けて目を輝かせていた、正直業者への仕出しではなく販売用のものとして作ってもおかしくはない出来だ。
結愛「折角だから食べてみるか?」
好美「そうだね・・・、食べなきゃ勿体ないよね。」
何となく意味深げな会話を交わす2人、ヤンチは嫌な予感がして仕方なかった。
結愛「ヤンチさん・・・、これ好美の家で食べても良いですか?ちょっと「打ち合わせ」したいので・・・。」
ヤンチ「「打ち合わせ」・・・、ですか・・・。大切なお仕事ですからね、勿論どうぞ。」
ケデール「結愛社長・・・、何ですか、その見え見えな嘘は。」
嫌な予感がして仕方がない兄弟。