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何も考える事無くいつも通りやって来た好美。
-68 作戦決行とその代償-
無数の星達が眩く瞬く夜空の下でいつも通り出勤して来た好美は、夜勤用の出入口で目を丸くして立ち尽くしていた。
好美「おはようございまー・・・、何で?何であんたがここにいんの?結愛。」
「関係者以外立入禁止」であるはずのこの場で結愛が腕を組みながら椅子に座っていたのだ、しかもいつものパンツスーツではなく好美達と同じつなぎ姿で。
結愛「いや・・・、実はな・・・。」
結愛の言葉を遮るようにニコフが横から声をかけてきた。
ニコフ「おはようございます、好美さん。実は数時間前に守から電話があったんですよ。」
好美「えっ?!守が?!あっ、すいません。おはようございます。」
まさかの名前に、挨拶を忘れかけていた好美。「挨拶も出来ない人間に仕事なんて出来やしない」と普段から自分で言っておきながらの失敗である。
結愛「俺が守に頼んだんだよ、好美の仕事を1日体験してみたいって。」
ニコフ「流石に自分でも天下の貝塚財閥の結愛社長には逆らえませんからね、それに王城にあるメーターはダンラルタにある貝塚電子工業製ですから。」
よく考えてみれば西洋風の王城で不自然な位に目立っているメーターが何故あるのか分からなかった。
好美「あのデジタルメーターって結愛の所のやつだったんですね、そりゃあ先進的な物がある訳だ。」
結愛「王様に頼まれてよ、「王城で働く人たちの作業環境を快適に保ちたい」って言うもんだから是非にとさせて貰ったんだ。実はそのメーターの点検を抜き打ちで俺がやっててな、それを兼ねて来たんだよ。」
好美「成程、貝塚財閥が大切にしているのは信頼って事ね。」
それから時間が経過して0:00、つまり最初の見回りの時間が来た。
ニコフ「そう言えば好美さん、今日は「お供え物」はどうされたんですか?」
好美「今日はクォーツ神様が有休らしいので持って来て無いです。」
ニコフ「しかし、王族の方々用に必要なのでは?」
好美「光さんが持って行ったって聞いてますのでご安心を。」
神への供えと聞いて改めて異世界に来たという実感が湧いた結愛は2人の会話に興味津々だった様だ。
結愛「「お供え物」って何の事だ?」
好美「光さんの所のカレーよ、クォーツ神様や王族の方々も一晩寝かせたカレーにハマっちゃったみたいでさ。」
結愛「へぇ・・・、意外と庶民的なんだな。」
メーターの点検も異常無く終わり、ほのぼのとした雰囲気が漂う中で好美が気になっていた質問を結愛に投げかけた。
好美「ねぇ結愛、こっちの世界では中型以上のトラックやバスの需要ってあるの?」
結愛「そうだな・・・、やはり主流は軽トラだけど年々増えては来ているぞ。あっ、そうだ!!忘れてた!!」
好美のお陰で本来の目的を思い出した結愛、本当何の為に来たんだか・・・。
好美「何よ突然、鼓膜が破れるじゃん。」
結愛「好美、ヤンチさんの所の駐車場の契約をするんだろ?」
好美「うん・・・、10~15台分程の予定だけど。」
話を円滑に進める為に飽くまでも下手に出る結愛、これもビジネスのテクニックというやつなのだろうか。
結愛「あれ、俺の所でも使って良いか?学園のバスを止める場所が欲しくてさ。」
好美「別にいいよ、まだ美麗の事しか聞いてないから大丈夫だと思うけど。」
結愛「助かるぜ、今度酒でも奢らせてくれや。」
好美「今の言葉・・・、嘘じゃないよね・・・。」
意味深げに返答した好美、隣にいた社長は固唾を飲んでその言葉を聞いていた。
好美の言葉の意味とは・・・。