669
イャンダは耐えきれるだろうか・・・
-669 研修の理由と目的-
元竜将軍は『念話』の向こうで恐らく笑顔となっている社長の言葉に焦りの表情を見せていた、ただでさえ「もうすぐ開店する新店の店長」というだけで荷が重いというのに「恋人の実家であるトンカツ屋とのコラボメニューである朝食メニューの提供開始」に加えて今度は「打ち立て麺での商品の提供」だって?!
一先ずイャンダは深呼吸をして「しかし待て俺・・・」と冷静さを取り戻そうとした、シューゴの提案に対して多少ではあるが問題点があるからだ。
イャンダ(念話)「あのシューゴさん・・・、ちょっと良いですかね。」
飽くまで下手に出る新店の店長、これは「相手が話しやすくなる様に」という工夫に見えるのだが元々シューゴ自体の腰が低いのでそれ以上(いや以下か?)になる為の唯一の方法だというのだ。
シューゴ(念話)「私で宜しければ、どうかされましたか?」
この空気で「いやいや、返答出来るのはあんたしかいないだろう」とは言える訳が無い。
イャンダ(念話)「私・・・、そんな事初めてお伺いしたんですけど。」
シューゴ(念話)「そりゃあそうなりますよね、だって昨日決まった事なんですから。」
イャンダ(念話)「き・・・、昨日ですか?!」
「そりゃ知らない訳だよ・・・」と愕然とした表情を見せるイャンダ、一体どういう経緯でこうなったというのだろうか。
シューゴ(念話)「まぁこれがニコフさんに製麺の研修を受けて頂く理由にもなるんですけどね、実は先日の事なんですが一秀さんから相談を受けたんですよ。」
イャンダ(念話)「「相談」・・・、ですか・・・。」
これは俺もついうっかり忘れかけていた事なんだがシューゴや渚の乗る屋台を含めた「暴徒の鱗」全店の麺はダルラン光(旧姓:吉村)の元上司で叔父の一 一秀が今でも担当している、その一秀がシューゴに相談とは何と珍しい事であろうか。
シューゴ(念話)「ええ・・・、一秀さんが言うには「チェーン全体での人気が上昇してどんどん店を増やしていくのは良いが流石に製麺等が追いつかない」との事なんです。それに次新店を出す予定のダンラルタ王国は他の2国に比べて交通の便が未だに悪い、ですので折角のこの機会を利用させて頂き製麺をできる拠点を増やそうと考えたんです。」
イャンダ(念話)「そうですか・・・、しかし何で「ド」の付く新人に?」
イャンダの言い方は決して良い物では無かったが間違っている事は言っていない、ただシューゴにもしっかりとした理由があった様だ。
シューゴ(念話)「そうですね・・・、イャンダさんを含めた店長職の方々や好美さん達といったオーナーを務める方々は多くの事を覚えて下さっていますからその上で新しい事を学ぶのは大変だと思ったからなんですよ。実際私自身がそうですからね、ですのでほぼ「何も知らない」状態であるニコフさんが適任では無いかと思ったんです。」
イャンダ(念話)「そうですか・・・、ただ・・・。」
シューゴ(念話)「「ただ・・・」、どうされたんです?」
わざわざ王城の仕事を辞めてでも「暴徒の鱗」への入社を決めたニコフの心中を知っているイャンダはシューゴの提案になかなか賛同が出来なかった様だ、「ただ社長の意に反する事になるので意見をしても良いのだろうか」と少し抵抗していた様だが・・・。
イャンダ(念話)「少し言い辛いんですけど・・・。宜しいでしょうか。」
シューゴ(念話)「勿論です、貴重なご意見として聞かせて下さい。」
「流石に怒られるか」と覚悟を決めた新店の店長は手に汗が流れるのを感じながら言ってみる事に、何の問題も無ければ良いのだが・・・。
イャンダ(念話)「実はと申しますと、ニコフ本人は「俺(イャンダ兄さん)と一緒に働きながら料理の勉強がしたい」と言っているんです・・・。」
「やはりマズかったか・・・?」と息を飲むイャンダ、しかし社長の反応は「まさかの・・・」と言える物であった。
シューゴ(念話)「それも存じております、それでなんですが御主人や女将さんの許可を頂いて「竜騎士の館」の空きスペースに新しい製麺機を置かせて頂く事になりました。」
イャンダ(念話)「あの・・・、もしかしてそれも・・・。」
シューゴ(念話)「はい、昨日決まりました!!」
イャンダ(念話)「やっぱりですか・・・、何てこったい・・・。」
やっぱり・・・?




