666
早く内定貰えや・・・
-666 採用のために-
天界から聞こえる声色から見るに「一柱の神」の(事実上の)四女が未だ就活に苦戦している事が十分に伺える、しかしそれが下界に伝わっているとは限らない。
好美「トゥーチ、頭下げてるかも知れないけど見えて無いから。ただエラノダさんはどうされますか?」
やっぱり伝わって無かったっぽいね、まぁ仕方が無いか。
腕を組んで数秒程考え込んだネフェテルサ国王は一先ず・・・。
エラノダ「面接・・・、してみますか?」
トゥーチ「本当ですか?!有難うございます!!」
好美「あんた・・・、急に丁寧になったね。」
一先ず誠意を見せる為に天界から降りて来たトゥーチはまるでエラノダの返答を待っていたかの様な姿だった、そう、この『人化』した古龍はリクルートスーツを着用して準備万端だったのだ。
しかし衣服だけでは不十分である事だけは誰にでも理解できる、特にトゥーチの場合は大卒(新卒)での採用面接であるので・・・。
好美「トゥーチ、飛び入りで面接してもらえるのは良いけど履歴書やエントリーシートの方は大丈夫な訳?」
そうそう、俺も学生だった時に腕が痛くなるまで書いたよな・・・。
好美「創造主には聞いてないの、今はトゥーチの事が大切でしょ。」
そっすね・・・。すんません、話を続けます。
好美からの質問を聞いたトゥーチはすぐに持っていたリクルート鞄の中をごそごそと探り始めた、恐らくだが「これは準備なんかしてないな」という空気が流れていたのだが。
トゥーチ「ああ・・・、あったあった!!ホラ、ちゃんと持ってただろ?!」
今にも「ドヤッ」と言わんばかりの表情と共に履歴書を見せる古龍、ただそれを見ていた好美はため息をついていた。
好美「あんたね・・・、絶対余分に何枚か書いてたでしょ。」
トゥーチ「良いだろうが、余っても困る事はないぜ!!」
まぁ確かにそうだ、しかし何か忘れている様な・・・。
好美「それで?「エントリーシート」は?」
トゥーチ「あっ・・・。」
好美「いやいや「あっ・・・。」じゃないでしょ、無いと面接してくれないかもよ。」
すると2人の会話に横から入って来た者が、自ら面接官を勤める「こちらの御方」だ。
エラノダ「今回は飛び入りなので構いませんよ、隣の給湯室で行いますので準備が出来たらドアをノックして下さいね。」
そう言うとドアをゆっくりと開け閉めして中へと入って行った、その時好美にはドアノブが小刻みに震えているのが見えていた。これは飽くまで推測だが王とも言えど長い人生の中で神様の採用面接を行うことなんて滅多に無いので緊張しているのだと思われた、だがしかしそれはエラノダだけでは無かった様だ。
好美「トゥーチ、あんたもしかして緊張してる?」
トゥーチ「そ・・・、そんな訳ねぇだろ!!俺は神だぞ!!」
好美「そうよね、神様は何でもそつなくこなす凄い存在だもんね。」
そういう割には動きが硬い気がするのは俺だけだろうか、まぁ別に良いか。
扉の前に立っていた古龍は深呼吸して2~3回ノックした。
好美(小声)「やっぱり緊張してんじゃん。」
好美がクスクスと笑っていると扉の奥から国王の声が・・・。
エラノダ「どうぞ。」
トゥーチ「失礼いたします!!」
古龍は緊張した面持ちで給湯室へと入って行った、上手く行くと良いのだが・・・。
面接って慣れないよね