656
会話の目的を忘れてはいけないのだが・・・?
-656 「将来」か・・・-
しつこい様だが元竜将軍は決して素因数分解の話をしたくて将軍長に連絡を入れた訳では無い、忘れない内に本来聞きたかったことを早く聞いた方が良いのではと思ってしまうのはきっと俺だけでは無いだろう。正直言ってニコフは先程好美が言っていた様に今夜仕事があるなので寝てしまいたいはずだ、同じ夜勤をしている者として言わせて貰うが。
ニコフ(念話)「国王様が絡んでいるだって?!」
やはり店長の言葉の意味が気になって仕方が無いニコフ、本人でなくてもこのままだとモヤモヤして眠れなくなってしまう。
イャンダ(念話)「いや実はな・・・、兄貴が作った拉麵用の出汁を口にして「冷やしで出せばどうか」と言い出したんだよ。言わるがままに試してみると美味かったし、やはり出さないと王命に背く事になってしまうだろ?だから一応メニューに加えようかと思っているんだ、個人的には何となく悔しいが兄貴にレシピを聞かなきゃだな。」
ニコフ(念話)「それは大変なこったな、俺も今度味見してみないとな。」
イャンダ(念話)「その前に今夜ちゃんとネフェテルサの国王様と話さなきゃだろ?」
ニコフ(念話)「そうだった・・・、じゃあそろそろ寝ないとだな・・・。」
おいおい、このままだと会話(『念話』)が終わってしまうぞ?聞きたかったことが聞けないんじゃないか?
ニコフ(念話)「それにしても兄さんとこうやって話せて嬉しいよ、また今度世間話でもしながら呑めたら良いんだけどな。」
イャンダ(念話)「それもそうだな・・・、って違うよ!!」
ちゃんと思い出せた様子のイャンダ、一先ず安心安心。
ニコフ(念話)「どうしたってんだよ、お陰でビールを溢しかけたじゃ無いか!!」
イャンダ(念話)「いやお前・・・、呑もうとしてたんかい。」
ニコフ(念話)「世に聞く寝酒って奴さ、呑まないと仕事なんて嫌になっちゃうからね。」
あらま、この世界でも俺みたいな考えを持っている人が多いらしい(と言っても俺が創造した世界だから十分あり得る話か)。
ニコフ(念話)「それで何だよ、何を聞こうとしてたんだ?」
ニコフさんよ・・・、この会話を通じて偉く態度が変わった様だが大丈夫なのか?
イャンダ(念話)「悪かったよ・・・、いや今回産まれたお子さんの種族を聞いておこうかと思ってな。俺だけじゃ無くてピューも気になってたみたいだから。」
ニコフ(念話)「「ピューさん」って確か・・・、兄さんのお店でナイトマネージャーをしてた人魚さんの事?」
イャンダ(念話)「上級人魚な?間違えちゃうとあいつマジギレするからちゃんと覚えとけ。」
恋人がマジギレした時に遭遇してしまった経験があるので言える事、確かに「あれ」は凄かったな。
ニコフ(念話)「分かったよ・・・、それでうちの子の種族だっけ?」
イャンダ(念話)「そうだよ、それそれ。」
さっきからそれを聞く為に話していたはずなのに結構な時間が掛かってしまった様子、まぁ楽しそうにしていたから良いか。
ニコフ(念話)「えっとね・・・、産婦人科の先生が言うには「半鳥獣人」らしいよ。」
イャンダ(念話)「ふーん・・・、予想はしてたけど結構普通なんだな。」
ニコフ(念話)「でもよ、やっぱり種族とか関係なく自分の子供となると可愛く思えるもんなんだよな。「ここは俺に似てる」とか話し合うのが楽しくてさ。」
イャンダ(念話)「そうか・・・、幸せそうで何よりだ。」
ニコフの微笑ましい表情と重ねる様にピューアとの将来の事を早くから妄想し始めたイャンダ、まだ結婚してもいないんだから早すぎるだろうがよ。
ニコフ(念話)「じゃあ兄さん、俺今夜仕事だから寝かせて貰うわ。」
イャンダ(念話)「分かった・・・、おやすみ。」
将軍長は新しい家族とのこれからの人生を思い描きながら眠りについた様だ、お幸せに。
偶にはこういう時もあっていいかな