654
好美が黙っている訳が無かった
-654 何処でも配慮は必要だよ?-
好美から突然飛んで来た『念話』に驚きつつ、「これは電話をかける手間が省けた」と将軍長は安堵していた。
好美(念話)「ニコフさんが王国軍と夜の見回りの仕事から抜けるのはニコフさんの自由です、でも「その後」の事をちゃんと考えているんでしょうね?」
好美達が深夜に行っている見回りの仕事においてはニコフが主体となってシフトの調整などを行っていたのでその点における引継ぎをどうするかという話をしたかった様だ、確かに子供が産まれたという事はめでたいがそればかりではないのを思い知らされた気がしてならなかった。
ニコフ(念話)「辞職する意を伝える際に王様と相談させて頂こうかと思っていたんですよ、ただ最近もしかしたら王城の管理体制が変わりそうになっているのでなかなか言い出せなかったんです。」
好美(念話)「「管理体制が変わる」って・・・、もしかしたら私達の仕事が無くなるという事ですか?!」
好美は驚愕しているみたいだが他の収入減があるので自身の生活自体に影響が出るという事はない、しかし共に働いている仲間の事などを考えると黙っている訳にもいかない。
好美(念話)「まず第一に「お供え物」はどうするんですか、それ目当てに今でもクォーツ神様が毎週天界から降りてきているでしょう?!」
ニコフ(念話)「「お供え物」に関しては以前好美ちゃんが有休を取得した時と同様に部下に頼もうと思っています、それにエリューさんに任せておけば問題は無いかと。」
好美(念話)「確かに問題は無いと思いますが・・・。」
エリューが「一柱の神」の1柱で火炎古龍である事が未だに広く知らされている訳では無いので将軍長が「お供え物」に関する事を一任しようとしても十分おかしな話ではない、ただ好美は神様に頼み事をする事に抵抗を覚えていた。
ニコフ(念話)「何か・・・、問題でも?」
好美(念話)「いや・・・、大丈夫だとは思うんですけどやっぱり急なもんですから。一先ず本人に話を通さないといけないでしょう、私に任せて頂けませんか?」
ニコフ(念話)「そんな・・・、悪いですよ。私自身の事ですから直接話させて下さい。」
好美(念話)「気持ちは分からなくも無いんですがね・・・、多分寝ているんですよ。」
エリューは好美がオーナーを務めるコンビニエンスストア・「コノミーマート」で今朝までナイトマネージャーとしての仕事をしていたので部屋(1209号室)に戻って寝ているはずであった(相変わらずセンスのないネーミングだな)、「たとえ相手がドラゴンだと言ってもやはり人として配慮するべきだ」と考えたのである。
好美(念話)「よく考えて下さいよ、女性が寝ている部屋に入ろうとするといくら王国軍の将軍長と言っても怪しまれるに決まっているでしょうが。」
ニコフ(念話)「それもそうですね・・・、恐れ入りますがお願い出来ますでしょうか?」
好美(念話)「分かりました、この話の続きは夜勤でお会いした時に。」
ニコフ(念話)「助かります、恐れ入りますが宜しくお願い致します。」
『念話』を切ったニコフは一呼吸置いた後、「好美がしっかりしている人で良かった」と思いながらすぐ近くにあるソファに腰かけた。ただ何か忘れている様な気がする・・・。
イャンダ(念話)「おい、お前完全に俺の事を忘れていただろう。」
好美を中心とした『念話』がずっと続いていたので通話料金の事を考慮に入れてさり気なく電話を切っていた、それが故に従兄弟と話していた事が頭から抜けてしまっていた様だ。「ただ今更電話を使うのも面倒だな」と傍らで思いながら相手に合わせて『念話』で話す事に
ニコフ(念話)「そ・・・、そんな事無いよ?」
イャンダ(念話)「じゃあ・・・、俺達が何の話をしていたかちゃんと覚えているのか?」
それから十数秒程が経過した、これは完全に・・・。
ニコフ(念話)「覚えているから、覚えていますから!!」
イャンダ(念話)「そんなに言うなら・・・、何の話をしていたか教えてくれないか?」
ニコフ(念話)「えっとね・・・、ここまで出て来ているんだけど。」
イャンダ(念話)「おい、それ忘れている人の台詞だぞ。」
ニコフ(念話)「「素因数分解」についてだよね?俺いつも苦戦しちゃうんだ!!」
イャンダ(念話)「馬鹿か、俺がいつ科学の話をしたんだよ。」
ニコフ(念話)「ごめん兄さん・・・、素因数分解の何処が科学な訳?」
2人共馬鹿だな