65
昼になって眠気がやって来た好美。
-65 大家が眠る裏で-
時計の針が2時前を指し示し、好美が夜勤なので一睡すると戻った一方で一旦電話から抜けたヤンチは早速美麗の指定した番号の駐車場を確保する為に相談も兼ねて弟に連絡を入れた。ただ自分達が兄弟だという事自体が発覚して殆ど間もないというのに大丈夫なのだろうか、一先ず様子見してみようか・・・。
ヤンチ「ケデール、ちょっと時間あるか?」
調理場の裏でオレンジジュースの入ったグラス片手に電話を掛けたヤンチ。
ケデール(電話)「に・・・、兄さん。どうした、唐突に。」
未だヤンチの事を「兄」だと呼ぶ事すらうまく出来ないのに業務提携や店の経営など共に出来るのだろうか。
ヤンチ「慣れていないなら名前でも良いと何回も言っているだろう、まぁ、今は良いよ。実は例の駐車場の事なんだが、10~15台分を好美ちゃんのマンション用に貸し出す事になったんだが良いか?」
いつの間にか「好美さん」から「好美ちゃん」に戻っている事は今はそっとしておこう、問題はそこでは無いだろう。
ケデール(電話)「嘘だろ、先に相談してくれよ・・・。まずい事になったな・・・。」
電話の向こうで焦りの表情を隠せない弟、何があったのだろうか。
ヤンチ「「まずい事」って?」
ケデール(電話)「実は貝塚学園の通学用バスの一時駐車場として使わせて欲しいって結愛社長からさっき電話が入ってOKしちゃったんだよ。」
正直言って人の事を言えないのはお互い様、やはり兄弟だからか。しかし、兄は決して焦りを見せる事は無かった。
ヤンチ「まだ大丈夫だよ、現時点では利用を予定しているのは2台分だけなんだ、まだ増えるかも知れんがそこは話し合いながらだろう。」
すると、2人の会話を『察知』したのか、「噂の社長」から『念話』が。流石はネクロマンサー、話が早くて助かる。
結愛(念話)「あの・・・、お悩みの様でしたら私が好美と話しましょうか?」
今回はビジネスでの話し合いの場なので、「大人モード」での対応だった。やはりそこは大企業の社長、オンとオフの切り替えが上手な様だ。
結愛「てめぇ・・・、何上から物言ってくれてんだよ。仕事サボって小説書いてるゴミクズ会社員が生意気言ってんじゃねぇ、お前と違って俺は社長なんだぞ。」
な・・・、何かすんません・・・。圧が凄すぎるわ・・・。まさか登場人物とこんな形で話す事になるとは、避けては通れない事なのかね。ただな、その「ゴミクズ会社員」の妄想次第でお前の人生なんてどうにでもなるんだからな。
結愛「わ・・・、悪かったよ・・・。」
まぁ、分かってくれたら良いんだ。じゃあ気を取り直して・・・・・・、と・・・。
ライカンスロープ達に承諾を得た結愛は、早速好美に『念話』を飛ばして駐車場に関する相談を持ち掛ける事にした。
結愛(念話)「好美・・・、今大丈夫か?」
好美(念話)「・・・。」
結愛(念話)「聞こえてねぇのかな・・・、好美?」
返事が無いのも無理は無い、好美は酒が回って熟睡していたのだ。仕方がないと思った結愛は好美の代わりとして守に一言連絡して伝言を頼むことにした。
結愛(念話)「守、すまね。好美に伝言を頼めるか?あいつ、熟睡しているみたいなんだ。」
守(念話)「そりゃそうだな、今夜仕事なのに大瓶5本丸呑みしてたから無理もねぇよ。」
結愛(念話)「ハハハ・・・、アイツは相変わらずだな、俺もドン引きしちまう位だぜ。」
守(念話)「誰だよ、好美を昔以上の酒呑みに育てたのは。」
結愛(念話)「悪かったよ、ただ一緒に呑める相手が欲しかっただけなんだ。」
守(念話)「はぁ・・・、お前らしい返答だな・・・。」
やはりこの世界の住民は酒好きが多い・・・。
 




