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流石に俺も断りたいんだよな
-650 大事と大事?-
恋人の兄による「試食会(という名の拷問)」を何とか回避した上級人魚は朝ごはんメニューについて頭を悩ませながらテレビのニュースを見ていた、ただやはり脳内はメニューの事で一杯なので殆ど何についての報道なのかは分からなかったが。
ピューア「やっぱり・・・、家庭的なメニューの方が良いのかな。ただ新しく考案した料理を出したとしてもお客さんに受け入れてもらわないと意味が無いよね・・・。」
そんな中、「少し喉が渇いて来たし気分を変えよう」と冷蔵庫から麦茶を取り出した。やはり新店の副店長である前にニクシー(というより魚人族)なのでこまめな水分補給は欠かせない様だ、すぐ近くの食器乾燥機からグラスを取り出してお茶を注ぎながら目をやるとテレビ画面では隣のネフェテルサ王城についてのニュースが放映されていた。
ピューア「「ネフェテルサ王城」か・・・、確か好美が夜勤してたのもここだったよね。」
別に改めて思い出す程の事では無いのだが何となく「ネフェテルサ王城=好美の職場」という事が脳に焼き付いていたので第一声がこうなってしまった様だ、ただニュースになる様な出来事とは何があったんだろうか・・・。
ピューア「何々・・・、「ダンラルタ王家一族とネフェテルサ王城の将軍長夫妻の間に第一子誕生」ね・・・、ってえええええええええええ!!」
イャンダ「何だよ急に、廊下まで聞こえて来てたぞ。」
風呂上がりなのだろうか、タンクトップと下着のみという格好の元竜将軍。
ピューア「だって・・・、これ見てよ!!これって大事よ!!」
イャンダ「「大事」ってピューも大袈裟だな・・・、「ダンラルタ王家一族とネフェテルサ王城の将軍長夫妻の間に第一子誕生」・・・、ってえええええええええええ!!」
おいイャンダ、人の事言えんぞ。一先ず恋人に謝っとけ。
イャンダ「ちょっと待てよ・・・、ついこの前これに似た事を聞いた様な気がするんだよな。物凄く近しい存在に・・・、あっ!!アイツだ!!従兄弟のニコフだ!!」
ネフェテルサ王国にある「暴徒の鱗 ビル下店」の調理場にて守がピューアの父・メラルークの為にハヤシライスを作っていた裏でニコフが好美に夜勤の交代を要請した理由を何となくで聞いていたイャンダ、ただその時は酒が入っていたので「そうなんだ」で話を終わらせてしまっていたらしい。
ピューア「何でその事をすぐ言わなかったのよ!!」
イャンダ「いや・・・、結愛社長に結構吞まされて酔ってたから覚えて無かったんだよ。まさかこれ程の大事だったなんて・・・、ニコフの奴がホークマンの女性と結婚していたのは何となくで覚えていたけど王家一族と思わないじゃ無いか。」
知っていなくても当然だろう、普段ネフェテルサ王国のパン屋で働いている話題のホークマン・キェルダは自分とマックの双子が王家一族の者である事を隠しているからだ。
ただピューアはそれより重大(?)な事を思い出していた様だが・・・?
ピューア「うーん・・・、ちょっと待って・・・。」
イャンダ「どうした、顎に手をやって考えこんじゃって。」
正直朝ごはんメニューについてを考えていた時より深刻な表情をしている、それ程に重大な事らしい・・・、のか?
ピューア「うん・・・、いや今の今まで鳥獣人族と人間の間に子供が生まれたなんて聞いた事が無くてね。」
イャンダ「そりゃあ・・・、俺達が聞いた事無いだけなんじゃねぇの?」
「知らない内にあの人とあの人の間に子供が生まれてた」だなんて何処の世界でも十分にあり得る話だ、きっと2人の知らない所にもそう言った夫妻が沢山いる可能性がある。
ピューア「それが違うのよ・・・、これは聞いただけの話なんだけど鳥獣人族って昔の魚人族(私達)と一緒で「同族同士でしか結婚しない」らしいのよ。」
イャンダ「という事は・・・、史上初?」
ピューア「そうね・・・、多分そうだと思うけど・・・。」
冷静さを取り戻す為どういった種族が産まれたのかを予想してみる事に、それ必要か?
イャンダ「という事は・・・、産まれたのはグリフォン?」
ピューア「んな訳無いでしょ、それこそ大事だわ。」
いや騒動だろ