646
香りに騙されてはいけない・・・
-646 信じた人物の登場-
やはり先程と同様に良い香りがしているので俺個人としては期待してもいいのではと思うのだが、イャンダは何処か不安げな顔をしていた。
ピューア「ねぇイャン、大丈夫?」
イャンダ「うん・・・、きっと・・・、大丈夫だ・・・。」
ピューア「それ、どういう意味?」
首を傾げる上級人魚を含めた3人はスープの入ったコップを口元に運んで1口、すると・・・。
2人「マッズ!!」
イャンダ「やっぱりか・・・、シューゴさんに何も言わなくて正解だったかもな。」
ピューア「えっ?それどういう意味?」
そう、機械音痴であるイャンダの兄・ベルディは「味音痴」だったのだ。
イャンダ「でもさ、兄ちゃん・・・。」
新たな疑問が浮上した様子の弟、その表情から結構重要な案件である事が伺えた。
イャンダ「王様も通っていた食堂で働いていたはずなのに味音痴って・・・、一体どうやって仕事をしていたんだよ。」
ベルディ「俺が味音痴だって?!何を訳の分からない事を言っているんだ!!」
自分についての事実を一切認めようとしない兄、ここは論ずるより証拠を見せるのが賢明か(というか国王が食堂通いって・・・)。
イャンダ「じゃあ・・・、自分でもう一度味見してみろよ。」
弟に手渡された紙コップに入っていたスープを1口、その答えは何となく想像が出来ていた。
ベルディ「美味いじゃ無いか、何の文句があると言うんだ。」
イャンダ「じゃあ改めてピューの顔を見てみろよ、これが美味そうな表情に見えるか?」
恋人に突如視線を向けられたニクシー、その表情は「美味い」か「不味い」かと言うよりも「また飲まされるのか?!」と言わんばかりだった様で。
イャンダ「頼むよピュー、証拠を見せてくれ。」
相手は元竜将軍でこれからも共に働いていく仲間(と言うより自分の恋人)、「流石にこの2人の間の雰囲気を悪くする訳にはいかないか」と致し方なく応じる事に。
ピューア「じゃあ・・・、1口だけね。」
大きく息を吸って吐き出した後で一気に煽ったピューア、これ位で死にはしないと思うのだが何となく心配してしまうのは気の所為だろうか。
ピューア「マッズ!!やっぱり飲めたもんじゃ無いわ!!」
息を切らしながら答える様子からスープが相当不味い物である事が伺える、ここまで来ると流石に(いや決して)店では出せない。
そんな中、部屋の外から仲居の声がした。
仲居「あの女将・・・、皆様にお客様なのですが如何致しましょうか。」
ネイア「あらま大変、すぐ行くと伝えて頂戴!!」
仲居「いや・・・、それが・・・。」
後ずさりする仲居の声をかき消しながら部屋に入って来たのはまさかの人物だった。
ネイア「これはこれは王様、お出迎えも出来ずに申し訳ございません。」
パルライ「いえいえ、急にやって来たのは私の方ですのでお気になさらず。」
競艇場内にある自分の店舗の中休みを利用して様子を見に来たパルライ、それにしても相変わらず腰が低いな。
パルライ「それに今の私は王では無く「暴徒の鱗」の共同経営者として来てますから、好美ちゃんみたいに気軽に名前で呼んで下さいよ。」
悪気はないと思いますが・・・




