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あの威力はどうなってんだよ・・・
-641 ありゃあ・・・-
上級人魚による『巨大名瀑』が止み、ピューア本人の怒りがやっと治まったのは良いのだが「暴徒の鱗 ビル下店」の裏にある拘り(?)のビアガーデンは凄惨な状態になっていた。それに気付かせたのはずっと大好物を我慢していた「あの人物」、大事にならないと良いんだが・・・。
好美「何よコレ!!びっちゃびちゃじゃない!!」
折角全体のレイアウトやテーブル等のデザイン、そして食器返却システムの細部に至るまで念入りに打ち合わせを重ねて作り上げたビアガーデンがまさか自分の居ない内に水浸しになっているとは思わなかった好美。
好美「これ・・・、何がどうなったらこうなるのよ!!ちょっと、デルア?!」
一先ず店の責任者(店長)であるデルアを呼び出したオーナー、しかし元黒竜将軍は23:00に退勤して今は家でゆっくりと過ごしている。
ピューア「好美・・・、私がやらかしちゃったのよ・・・。」
すぐに冷静さを取り戻したニクシー本人が好美の肩を叩いて振り向かせると好美は一先ず落ち着こうと近くにあったグラスの水を煽った、「鬼の好美」は出現せずに済んだ様だ。
好美「ピューアなの・・・?まさかと思うけどもしかして「アレ」をやっちゃった訳?」
ピューア「ごめん・・・、「そろそろ向こうに行こうか」って時にイャンとお父さんが二日酔いで寝てたもんだからカッとなっちゃってつい・・・。」
この会話からどうやら好美はピューアが先程放ったとんでもない威力の魔法(能力)の事を知っている様だ、しかしさっきは本当にびっくりしたな・・・。正直転生者達ばりの強力さだった気がするんだが気の所為だと信じたい、勿論個人的に。
好美「もう・・・、「防犯用に念の為」って私が『作成』した能力で私の店を滅茶苦茶にしないでくれる?」
ピューア「悪かったって、久々に放ったから加減が分からなかったのよ。」
先程からずっと「どうして能力の名前が『巨大名瀑』なんだろう・・・」と頭を悩ませていたんだが「好美が『作成』した能力だから」という事で納得してしまった、ただその威力までをも『付与』する必要は無かったんじゃ無いか?
好美「何言ってんの、防犯用何だから「いつ・どこで・どんな奴に」襲われるか分からないから威力を絶大にした「状態」で『付与』したんじゃない。よく見てみ、ピューアってこんなに可愛いんだから襲われたっておかしく無いんだよ!!」
ピューア「好美・・・。」
元勤務先のオーナー、いや友人の優しさに「じ~ん・・・」と来てしまったピューア。しかし本人だって「ニクシー」なんだからそれなりに強力な魔法を放てるはずなので心配は無いと思うんだ・・・、ぶっ!!
ピューア「余計な事を言わないの、今は好美が私の事を思ってくれていたって事が大事なんじゃない。」
メラルーク「そうですよ。好美ちゃんがいたからピューアが活き活きと働けていたと言っても過言では無いですし、私も安心して娘を任せる事が出来ていたんです。」
好美「もう、照れるじゃないですか。そんなに褒めても何も出な・・・、こちらの方に生中1丁!!私に付けといて!!」
ピューア「好美、今さっき言ったじゃないの。私達もう出発するの、流石に仕事前に吞む訳にはいかないのはあんただって分かるでしょ。」
好美「それもそうだね、また今度奢らせて下さいね。」
メラルーク「それは嬉しい、楽しみに待たせて頂きます。ただ忘れていたらごめんなさい。」
好美「それなら・・・、安心して下さい・・・。」
メラルーク「ん?どうしました?」
『アイテムボックス』から新品の焼酎を取り出してその瓶に「メラルーク様」と書き込んだ好美、まさか「キープボトル」を作るとは粋な計らいをするじゃないか。
好美「これでいつでも呑みに来れますよね。」
メラルーク「あらま・・・、私は嬉しいですが宜しいんですか?」
今の今まで「暴徒の鱗 ビル下店」でボトルキープをした者がいただろうか。
ピューア「私は良いと思うけどただ好美・・・、これ何処に置くのよ。」
好美「あっ・・・、考えてなかった。」
やっぱりか・・・




