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兄想いと言うか、考えすぎというか・・・
-638 好美の事は良いから早く出発しろって・・・-
自分の発言が原因となった恋人の勘違いを正す為に必死になっていた上級人魚、ただそれは至難の業になりそうだが大丈夫なのだろうか。
イャンダ「やっぱり・・・、兄貴にはまだ「暴徒の鱗」のオーナーは無理なのかな・・・。」
ピューア「そんな事無いのよ、ただ何て良いのかしらね・・・。」
イャンダ「ピュー・・・、その前に何でそんなに慌ててんの。」
副店長が慌てるのも無理は無い、全くもって弁解の余地がない(というより上手い言い訳が見つからない)のだ。
ピューア「イャンったら何言ってんのかな、私は何処からどう見ても全く慌てていないよ?」
イャンダ「いや、他の誰から見てもあわててる様にしか見えないんだけど。」
店長の言う通りである、俺からもピューアが慌てている様にしか見えない。
イャンダ「誤魔化さずにハッキリと言ってよ、やっぱり兄貴には拉麵屋のオーナーは難しいんでしょ?」
そうは聞いているが2人共「店長・ナイトマネージャー(店員)」としての経験はあっても「オーナー」としての経験はない、そこはやはり先程夜勤へと向かった「ビル下店」のオーナーに聞くべきなのではなかろうか。
ピューア「そんな事は無いはずよ、今の今までずっと旅館の主人として働いて来たんだからきっと大丈夫よ。」
イャンダ「そうだけど、さっき好美ちゃんに「皆あんたがオーナーだから仕事を頑張れてるって言うか「一緒に頑張ろう」って思えてるって言うか」って言ってたじゃ無いか。」
ピューア「うーん・・・、何て言えば良いんだろうな・・・。」
まさか自分の恋人がこんなに疑り深い人間だったとは、恋人として付き合う以前の頃も含めてそんな様子を見かけなかった様に思える。
ピューア「ただ好美が優秀過ぎるのよ。私だってびっくりしたよ、突然ネフェテルサ王国に出来た拉麵屋やコンビニに高層マンションのオーナーがあんなに可愛い女の子だなんて思わないじゃない。今だから言える事だけど、ここに住み始めた頃は正直「このマンションや舌のお店、すぐ潰れちゃうんじゃないの?」って思ってしまった位だもん。」
以前好美本人が言っていた通り好美1人の力でここまで大きく成長させた訳では無いのだがやはり本人の人柄の良さや優秀さ、そして仕事に対する姿勢が功を奏したと言える。
イャンダ「人柄の良さや仕事に対する姿勢か・・・、兄貴にはそれがあるだろうか・・・。」
ピューア「あるに決まってんじゃない、でないと今頃旅館が潰れてるわよ。」
俺個人としてはニクシーの供述通りになって欲しい、しかし話題に上がっているイャンダの兄・ベルディは今旅館の仕事をほったらかして1人部屋で籠っている。
イャンダ「だったら良いんだけど、一先ず明日早いから今夜は休もうか。」
ピューア「さっきから何回もそうしようとしているんだけどね、なかなか動こうとしないんだもん。」
イャンダ「悪かったよ、次こそはちゃんと行くから。」
すると元竜将軍の背後から男性の手が伸びて来た、何となく嫌な予感が・・・。
そんなこんなで翌日、師匠・真希子の自宅で一晩世話になったピューアは日の出ではなく師匠の1声により目を覚ました。
真希子「おはよう、そろそろ起きないと向こうを待たせちゃうんじゃないのかい?もう・・・、綺麗な人魚さんの癖にどうしてこの子は寝相が悪いんだろうね。」
1人暮らしをしていた頃からの癖が出てしまったのか、ピューアはとても人魚(いや女性)の物とは思えない位大胆な体勢で鼾をかいていた(因みにTシャツに短パン姿である)。
ピューア「ああ師匠・・・、おはようございます。すみません、昨晩突然押しかけちゃったのに泊めて頂いて。」
真希子「別に1人で住んでいる部屋だからね、私は楽しかったし久々に一緒に呑めたから別に気にしていないよ。それよりイャンの方は大丈夫なのかい?」
いやお前、師匠の家に押しかけて呑んでたんかい・・・。
ピューア「大丈夫だと思います・・・、父も結愛も一緒だったと思うので。」
真希子「ピューちゃん、それが1番安心出来ないんだよ。」
そうそう・・・