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慌てても何も始まらない、今回の場合は別だが
-637 別に改めて思う程の事でもないのだがやはり好美は偉人である-
貝塚財閥代表取締役社長の言葉を受けて「やはり急いで旅館に戻るべきなのではないか」と思った副店長、しかし女将に言われた通り自分の片手にはキンキンに冷えた生ビールがあるので移動したところで仕事の打ち合わせなどまともに出来る訳が無い。
そう思ったピューアは半分諦めムードを、いや「いっその事今の状況を楽しんでやろう、どうせもう夜だし」という感情をむき出しにして手に持っていた酒を一気に煽った。
ピューア「もう良いか、お父さんもイャンも楽しんでいるみたいだし。」
本人は「同行している男性2人の所為」みたいに言っているが傍らから見ているこちらからすれば結局自分も今の状況を受け入れているではないかと思ってしまう、というかお前も2人と一緒に呑みたかったんだろ?
ピューア「仕方が無いじゃない、私だけ呑んで無いなんて絶対嫌だもん。」
こう言っているが先程から場の雰囲気に任せてずっと呑んでいるでは無いか、しかし制止をしたとしても別に何も変わらない。一先ず見守るだけにしておこう、そうしないと俺が何を言われるか分からない。
好美「創造主ね、ずっと私達の事を見ているけど本当に暇な奴なのね。」
えっ?!いや・・・、俺は普段夜勤で働いているちゃんとした会社員ですが?
ピューア「好美、創造主の事は放っておいて呑みま・・・、って何でいるの!!」
好美「いや・・・、今から夜勤に行くんだけどその前に様子を見ておこうかなと思ってね。」
ニクシーがふと時計を見てみると既に「21:40」を示していた、明日は早いのでそろそろストップしておかないといくら酒に強い者でも響いてしまうのは確実である。
ピューア「あ・・・、そうなのね。それにしてもあんたも大変よね、拉麵屋やマンションのオーナーをしながら夜勤で仕事だなんて。改めて思うけど私には絶対真似できないわ。」
好美「何よ今更、もしかして酔ってる?」
ピューア「そうかも、酒だけじゃ無くてこの雰囲気に酔っちゃったかもしれないわ。」
好美「馬鹿ね、全然上手くないっての。」
ピューア「今は「上手い」「下手」は関係無いんじゃない?それより早く行かないと遅刻しちゃうわよ?」
好美「そう言われてもね、今日の夜勤は急に決まったもんだから用意が出来ていなくてね。」
ピューア「何よそれ、どういう意味?」
好美「弁当が全然出来上がっていないみたいなのよ、「あと5分で出来る」って言われてからもう15分も待ってんだけど。」
夜勤(ネフェテルサ王城)へは『瞬間移動』で向かうので好美からすればまだ時間に余裕があるのだが、デルア自身からすれば今日1日での汚名を返上する最大のチャンスなので多少ではあるが力が入っている様だ。
好美「いつも通り店の残り物を詰めてくれれば良いだけなのにね、何をやっているんだか。」
ピューア「フフフ・・・。」
不意に笑うニクシーの顔を見て頬を膨らます拉麵屋のオーナー兼マンションの大家。
好美「何よ、何が可笑しいっての?」
ピューア「いや、ごめんなさい。ずっと思ってたんだけど「好美って色んな人に愛されてるな」って思ってさ。」
顔を赤らめる好美、確かに誰であろうとも今の台詞は恥ずかしくなる。スタッフに言って台本を書き替えてもらおうか。
好美「馬鹿言ってんじゃないよ、私を愛してくれるのは守1人で十分なの。それに創造主も余計な事をしなくても良いから、ただあの失礼なタイトルは何!!」
ピューア「そういう事じゃないの、皆あんたがオーナーだから仕事を頑張れてるって言うか「一緒に頑張ろう」って思えてるって言うか。タイトルに関しては知らないけど。」
好美「私・・・、何もしてないし!!もう時間だから行くね!!全くもう・・・!!」
ピューア「好美ったら素直じゃ無いんだから、創造主は悪人だけど。」
俺が「まさかタイトルに触れて来る奴がいるとは」と思っていると先程の台詞が響いたのか、知らぬ間にピューアの隣に恋人の姿が。
イャンダ「なぁ・・・、兄貴はオーナーとして何処か不足してる部分があるのか?」
ピューア「イャン?!ごめんなさい、そういう訳じゃ無いのよ。」
さぁ、どう言い訳する?