633
危ない危ない・・・
-633 絶対必要のない件-
危うく酔っ払い同士の口喧嘩が大事になりかけた中で「流石にまずいか」と思った新店の店長はオーナーとなる兄に電話をしてみる事に(いやそこは『念話』ちゃうんかい)、ただ久しく兄に電話をかける事が無かったからか電話帳アプリから番号を探し出すのに思ったより苦戦していた様だ。
ピューア「イャン・・・、さっきからスマホ片手に何難しい顔をしてんの?」
イャンダ「いや・・・、そろそろ向こうに行くから連絡しとこうと思ったんだけど兄貴の番号が見つからなくてさ。」
そうだ・・・、この元竜将軍が機械音痴だったのを忘れてた。
ピューア「もう・・・、相変わらずなんだから・・・。自分のスマホの使い方が何で分からないの?」
これは元の世界(日本)でもよくある光景、俺からすれば「見慣れた」というか「聞かれ慣れた」と言った所か。
イャンダ「面目ない・・・、それでなんだけどこれって名前で相手の番号を検索したり出来たっけ?」
ピューア「えっとね・・・、確かここだ。」
持ち主以上に本人のスマホを使い慣れている上級人魚、もういっその事ピューアの物にしちまっても良いんじゃねぇのか?
ピューア「馬鹿言わないでよ、私は自分用にちゃんと持ってんだから。」
それもそうだな、何かすんません。
イャンダ「それで・・・、どうすれば良いんだっけ?」
ピューア「ごめんごめん、検索だよね?」
恰も自分の持ち物であるかの様に恋人のスマホを使いこなしてイャンダの兄・ベルディの番号を検索しようとするピューア、ただそこには如何にも異世界らしい弊害があったらしい。
ピューア「えっと・・・、これって「人間語(共通語)」での検索なんだよね?」
イャンダ「勿論、それ以外分からないもん。」
種族関係無くほぼ全住民が「人間語」での会話や読み書きをする事が出来る(はずの)世界なのだがごく偶に「この単語ってどういう意味だっけ?」となる事がある、その様な事態が起こらない為にこの世界のスマホは各言語での表記が出る様に設定されているとの事なのだが・・・。
ピューア「ねぇ・・・、ちょっとだけ「魚人語」の表記にしても良い?」
イャンダ「ちゃんと元に戻してくれるなら別に構わないけど。」
ピューア「一瞬だけだから大丈夫、それに今でもちゃんと人間語を話しているじゃない。」
お言葉に甘えてイャンダのスマホを「魚人語」表記に設定したピューアはベルディの番号を易々と見つけ出した、そして画面が元に戻らない内に電話をかける・・・。
イャンダ「ん・・・?繋がらないぞ?」
ピューア「あれ?番号間違えたかな・・・。」
念の為にスマホ画面を確認したピューア、そこには確かに「兄貴」と表記されている。
ピューア「これで・・・、大丈夫なんだよね?」
イャンダ「あのさ・・・、そう言われても・・・。」
そう、未だにイャンダのスマホは「魚人語」での表記となっていたのだ。
ピューア「あら失礼、すぐ戻すね。」
急いで「人間語」表記に戻すピューア、ただどうしてわざわざ「魚人語」表記に設定したのだろうか。
イャンダ「確かに「兄貴」の番号だね、ただ電話に出ない事なんて今まであったかな・・・。」
ピューア「というかイャン、いい加減自分のスマホの使い方を学びなさいよ。」
イャンダ「その前に「魚人語」を学ぶべきかもな。」
ピューア「いや・・・、全くもって必要無いから。」
というかこれ自体必要だったか?!




