632
致し方無いと言えば致し方が無い
-632 出ぱ・・・-
急遽決まった王城での夜勤に向けてシャワーを浴びた後にベッドへと好美が向かった頃、ハヤシライスを存分に堪能した魚人を含んだ3人はやっと「竜騎士の館」へと向かう準備を始めた。本来なら数時間前に到着して店長達が準備に勤しんでいる横でオーナー達が談笑している頃だったのだが脱線によりかなり時間を食ってしまった様だ、しかし今回の脱線はトンカツ屋の店主にとって有意義な物になったと言っても良いのかも知れない。
メラルーク「とても美味しかったです、今度私の店にも食べに来て下さい。」
守「嬉しいです、是非お言葉に甘えさせて頂きます。」
固い握手を交わす2人、種族の違いなど全くもって感じさせない。
良い雰囲気が漂う中、上級人魚はきょろきょろと辺りを見廻していた。
ピューア「ねぇ守君、好美はどうしたの?」
どうやら先程の『念話』の内容を知らなかった様で、好美が突然いなくなった事に焦っていた様だ。ただ好美ももう子供では無いのでそこまで心配する必要などないと思うのだが・・・、まぁそれに関しては何も言わないでおくか。
守「好美だったら『瞬間移動』で自室に睡眠を取りに行きましたよ。」
ピューア「そうなの、でもあれ・・・?あの子って今夜有給って言ってなかった?」
守「先程王城の方から連絡が来て今夜急遽仕事に行く事になった様でして、まぁ今年はも既に有休を5日取得していますから仕方ないんじゃないですか?」
ピューア「あの子らしいわ、正に「自業自得」ってやつね。」
おいおい2人共、そんな事言ってると本人が黙っていないんじゃねぇのか?
守「創造主は心配性だな、熟睡しているはずだから聞いてねぇんじゃねぇの?」
ピューア「そうよ、あんたもあの子が呑んだ量を知ってるでしょ?流石の好美も気持ち良くなって寝てるはずだから大丈夫だって。」
好美(念話)「誰が「自業自得」だって?」
ほら・・・、やっぱり聞こえてたじゃねぇかよ。
ピューア(念話)「あんた・・・、寝てたんじゃないの?今夜夜勤になったんでしょ?」
好美(念話)「いや・・・、もうちょっとだけ呑んでから寝ようかなと思ってたの。」
ピューア(念話)「相変わらずなんだから・・・、あんた酒に強いみたいだから別に構わないけどちょっとだけにしときなさいよ?」
やっぱりこの世界の住民は酒好きばかりの様だ(勿論未成年を除く)、そこら辺アル中だらけってどんな世界なんだよ・・・。
好美(念話)「分かってるって、メラルークさんと一緒にしないでよ。」
ピューア(念話)「父ちゃん?何で父ちゃんが出てくるのよ。」
好美(念話)「ほらそこ、さっきから結愛が呑んでる席を見てみ?」
ピューア(念話)「え?結愛の席?」
言われた通りの方向へと振り向くピューア、すると・・・。
結愛「おやっさん、もう行っちゃうのかよ!!もっと呑もうっての!!」
メラルーク「馬鹿野郎、そういう訳にはいかねぇんだよ!!流石にこれ以上向こうの人に迷惑を掛ける訳にもいかんだろうがよ!!」
すっかり顔を赤くしてしまっているメラルーク、これはなかなか移動できそうにない。
結愛「おい、待てコラ!!まさかと思うがずっとこの俺の事を男だと思ってたのか?!どう見ても綺麗な女社長だろうがよ!!」
メラルーク「あのな、本当の綺麗な女社長ってのは自分で自分の事を「綺麗」だって言わねぇんだよ!!」
結愛「んだと?!言いやがったな、この野郎!!」
あちゃ~・・・、こりゃ悪い流れだぞ・・・。
ピューア「父ちゃん呑み過ぎだし言い過ぎだって、流石に結愛と不仲になっちゃうとこれからの仕事に支障が出るじゃないの?!」
守「結愛もだぞ、貝塚財閥で最も大切にしているのは「信用と信頼」だろ?人がいないと意味が無くなるんじゃないのか?!」
結愛「わ・・・、悪かったよ・・・。すまねぇな、おっさん。」
メラルーク「俺も大人気なかったよ・・・、悪かった・・・。」
大人だね・・・