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あらら・・・、デルアの給料はどうなるのかね・・・
-626 誰だって・・・-
今日の夕食を失った守以上に怒っていたのは先程自らが所有する店舗の店長について報告をした好美の方であった、守本人は「恐らく大食いだから食えなくなって悔しいんだろうな、また後で鍋いっぱいに作ってやるか」と思ったみたいだが好美が何を感じているのかは好美以外には分からない。
好美「デルア・・・、仕事をサボっていただけじゃなくつまみ食いまでしてたんだね!!」
まずいぞ・・・、これは流石に「鬼の好美」が出ちゃうんじゃないか?
デルア「いや・・・、いくら元黒竜将軍の俺だってノンストップで働ける訳がないから!!」
好美「何言ってんの、守がここに来てからデルアがまともに働いているのを見て無いんだけど!!」
確かに調理場でハヤシライスを作る守の横で作業を見守るという形で「ぼぉー・・・」っとしていたデルア、これは言い訳のしようが無いと思われるが・・・。
デルア「いやいや、お客さんもあんまりいなかったし注文もそんなに入っていなかったじゃ無いか!!」
好美「さっきまでお客さんとして来てた知り合いの人と話していた癖に何言ってんの、それにオーダーに関してはデルアが無視してたんじゃん!!」
好美の供述通りだ、注文された料理を好美本人が作ってホールを回していた混沌龍に手渡していたので間違っていない。
好美「ヌラルが出来る子だからってちょっと弛んでんじゃないの?!いい加減にして!!」
いち店舗のオーナーとして好美が怒りたくなるのも無理は無い、しかし場所をわきまえる事も考えなければならないのではなかろうか。
ヌラル「好美・・・、声が大きいよ。さっきからお客さんが委縮しちゃってるじゃんか。」
決して忘れてはいけない事なので繰り返すのだが「暴徒の鱗 ビル下店」の調理場はお客さん達が酒や食事を楽しんでいるホールから丸見えなのである、その上開放的になっているが故に声も筒抜けだったりするので好美の怒号が店中に響き渡っていた。
好美「すみません・・・、店長と私って仲良いからいつもこうなっちゃうんですよ。」
客「「喧嘩するほど仲が良い」ってやつか、まぁどんな事があってもここ美味しいから来ちゃうんだよね。」
好美「すみません、恥ずかしいばかりですよ。本当うちの店長ってダメなんです。」
客「でも店員さん、店長さんだって人間なんだから休みたい時位あるはずだよ?」
怪物として知られる吸血鬼が人間として分類されるかどうかは正直言って定かでは無いのだが、やはりこの世界では種族など関係無いので考えないでおこう。
好美「私もそう思いたいんですけどね、さっきからずっと休みっぱなしだったから言っているんですよ。」
客「ありゃま、そりゃ駄目だな。大変失礼致しました。」
好美「いえいえ、こちらの落ち度ですのでお気になさらず。」
客「それにしても店員さんに店長さんが怒られるシーンを見るとは思わなかったな、意味もなく笑っちゃったんだけど許してね。」
好美「ここではよくある事なんですよ、御覧の通り私は「ただの店員」なんですけどね。」
目の前の客に合わせた接客を心がける好美、しかしすぐ傍の席を片づけていたヌラルが今の発言を決して聞き逃さなかった。
ヌラル「何言ってるんですか、好美さんがオーナーなんだから十分にあり得る話でしょ?」
一応ホール(お客さんの前)なので丁寧に(?)ツッコむヌラル、ただ嘘をついている訳では無いので問題無し。
客「えっ・・・、君がオーナーなの?!見えないなぁ・・・、ただただ可愛い店員さんかと思った。」
好美「もう、褒めたって何も出ないですよ!!こちらのお客様に生中、私に付けといて!!」
出してんじゃねぇか・・・。褒められた事で笑顔が戻った好美の事は一先ず置いといて裏庭の様子はどうだ・・・、ってまだ審査結果が出て無いんかい!!
守「それにしても美味そうに食ってくれるな・・・、何か嬉しいな。」
守でなくとも嬉しくなる奴