624
異世界らしいっちゃらしいが・・・
-624 息子までもが知らなかった母の過去-
「噂をすれば影」というやつか、突如現れた母・真希子の姿に驚きを隠せないでいる守(というか「何でもありの世界」なんだから十分あり得ると何で思わないのかね)。
真希子「やだよ守、ここまでアレンジしてしまったら私の作った痕跡が殆ど残っていないじゃ無いか。」
ずっと息子の様子を『探知』していたが故に大笑いしながら『瞬間移動』して来た真希子は一呼吸置いて話し始めた。
真希子「でもまさかこんなに私の作った料理を気に入ってくれていたとはね、苦労して作った甲斐があったよ・・・。」
すると真希子の話に興味を持った魚人がお茶を手渡して目の前にかける様に促した。
メラルーク「良かったらお聞かせ願えませんか、このハヤシライスにまつわるお話を。」
真希子「私の下らない昔話で宜しければ・・・。」
お茶を1口啜ってから目を閉じて語り始めた真希子。
真希子「まず初めに守、あんたに一言謝らなきゃね。私が貝塚財閥の筆頭株主である事を隠す為だったとは言え、苦労を掛けて悪かったね。」
守「俺は別に構わないよ。寧ろ母ちゃんには感謝してるし、ただどうしてそこまでして隠す必要があったんだ?」
確かに隠す程の事では無いはず、しかし母親にはそれなりの理由があった様だ。
真希子「それはね、守。あんたを守る為だよ。」
守「俺を?」
ゆっくりと頷く真希子。
真希子「実は私、貝塚財閥の筆頭株主になってからずっと義弘派閥の奴らに追われていたんだ。どうやら他の株主達を勧誘(攻撃)して1%でも多くの投票権を握る事で会社の主導権を完全に義弘の物にしようとしていたらしくて1番多く持っていた私に白羽の矢が立ったって訳、その上私だけじゃ無くてあんたにも手を出していたみたいだからその場から逃げて隠れていたんだよ。」
茨の道を進んででも子供を守ろうとする親心、それが故の行動だったらしい。
真希子「ただやっぱり生きていく為にはお金がいるだろう、それで渚が光ちゃんを産んだ数年後にふらっと帰って来た阿久津と私との間にあんたが産まれてから身を潜めさせてもらう事も兼ねて王麗を手伝ったりパートを掛け持ちしていたという訳さ。その分あんたには辛くて寂しい想いをさせていた事を今でも反省しているんだよ、本当にごめん。」
改まったかの様に頭を下げる母に同様を隠せない息子。
守「よしてくれよ。さっきも言ったけど俺は母ちゃんには感謝しているんだ。頭を下げないといけないのは俺の方だ、本当にありがとう。」
親子の話に感動したのか再び涙を流すメラルーク。
メラルーク「しかし・・・、どうしてお1人で守君を育てる事になったんですか?差し支えなければお話し頂けませんか。」
真希子「もう昔の事だから構わないさ、実はというと私や渚は光ちゃんや守の父である阿久津と結婚していなかったんだよ。向こう側から「君達を組同士の抗争に巻き込みたくは無いから結婚は出来ない」って言って来たんだ、ましてや渚に至っては敵方の娘だからバレたら大騒動になり兼ねないからね。
道理で渚や真希子が阿久津の事を苗字で呼んでいた訳だ、納得納得。
真希子「ただ掛け持ちしていたけどパートの給料だけだと守を十分に食べさせるのが出来なくてね、ごく偶に出来た贅沢があの「ハヤシライス」や「豚すき焼き」だった訳さ。」
自分の知らなかった母の身を切る様な苦労話に涙する守。
守「そうか・・・、母ちゃんが苦労した分美味さが倍になっていたんだな。」
真希子「いや、あれはレシピ通りに作っただけさね。」
守「何じゃ、それ!!」
ぶち壊しやんけ!!