62
両親の様子が気になって仕方がない美麗達。
-62 自分勝手な娘と頭を抱える母-
焦っていた好美に申し訳なさそうに声を掛けた女神は、夫婦が店(と言うよりマンション)の駐車場に仕掛けた監視カメラの映像を何回も再生している様子を全員に見せた。誰もいない駐車場から突如王麗のトラックが消失している。「流石にまずい」と思った美麗が急いでトラックを『複製』して元の世界へと戻すと、先程「暴徒の鱗」で起こった地響きが「松龍」で起こった。
王麗「ど・・・、どう言う事だい・・・。」
王麗はトラックがいきなり出現したので泡を吹いて倒れてしまった。
龍太郎「母ちゃん!!母ちゃん!!しっかりしろって・・・、母ちゃん!!」
必死に妻の肩を叩く龍太郎、どうやらその努力が報われた様で・・・。
王麗「す・・・、すまないね・・・。もう大丈夫だから、水を1杯貰えるかい?」
部下であり、大切な妻である王麗をも失いたくなかった龍太郎は喜び勇んで調理場へと駆け込んでグラスいっぱいに水を注いだ。
龍太郎「母ちゃん・・・、ほら・・・。」
旦那から受け取った水を一気に煽ると、王麗は落ち着いた様子で何かを思い出した。
王麗「そう言えば、美麗の葬儀の時も不思議な事があったね。確か・・・、龍が飛んできて女神様になって・・・、「美麗がどう・・・」とか言っていた様な・・・。」
龍太郎「じゃ・・・、じゃあ・・・、これも美麗が絡んでいるってのか?」
龍太郎の推測は当たっていたらしい、真実が判明したのは王麗がトラックをいつもの場所に戻そうとした時だ。
王麗(中国語)「あの子ったら・・・、ちゃんと戻しなってあれ程言ってあったじゃないか。それに戻し方も相変わらず雑だよ、今回はドリフト以上に酷いし・・・。まぁ、幸せそうにしているみたいだから良い事にしておくかね。ただ、今度やったら容赦しないよ・・・。」
女将は助手席に置かれた1枚の手紙を見つけて涙ぐんだ。
龍太郎「母ちゃん・・・、どうかしたか?」
王麗(日本語)「ああ・・・、ごめん・・・。ちょっと見てくれるかい?」
2人は異世界にいる娘からの手紙に目を通したが、何故か中国語で書かれていたので龍太郎は妻に日本語で読む様に依頼した。
ママへ
パパと元気でやってますか?私は先日の火事をきっかけに異世界にやって来ました。確か・・・、女神様が2人の所に行ったはずだから分かってくれるよね。
今回、ママのトラックを借りたのは誠に勝手ながら金上秀斗君と同棲生活を始める事になったので香奈子の時の様に引っ越しをする為です。
一先ず、秀斗や好美や守君とも再会したので何とかやっていけそうな気がしています。
時々ですがこうやって手紙をよこそうと思うので、気が向いたら読んで下さい。
美麗
王麗「呆れた子だよ、あっちの世界でも好き勝手やってるみたいだ。」
龍太郎「まさか俺達に何の相談も無しにかんちゃんと同棲生活を始めちゃうとはな、相変わらず笑わせてくれるぜ。まぁ、あいつとなら安心だわな。」
王麗「あれ?まだ続きがあるよ・・・。」
王麗は名前の下に書かれた追記(P. S. )へと目をやった。
P. S. トラックのガソリン無くなっちゃったから入れておいてね、よろしく~。
王麗「あの子ったら、我儘ぶりも健在だよ。いつも通り、「小遣いから引いておく」からね。」
一方、「暴徒の鱗」でクォーツの映像を通して2人の様子を見ていた美麗の顔が蒼白していた。
好美「美麗、どうかした・・・?顔色悪いよ?」
美麗「実はさ、「小遣いから引いておく」って、「お説教確定」の暗号なんだよね・・・。」
王麗が同じ世界にいる訳でも無いのに顔を蒼白させる必要があるのだろうか・・・。




