620
長かった・・・、だけど・・・
-620 今「思い出」すべきなのか-
学生時代の懐かしい思い出に浸りながらも守は「もうすぐ完成だ」と意気込みながら料理の盛り付けを行っていった、ただやはりどうしても悩んでしまう。
好美「守・・・?どうしたの?」
顔を赤くしながら(酒に酔っていながら)も恋人(守)の心中を誰よりも察する事の出来る好美の事を改めて尊敬してしまう、ただ敢えてここでは何も言わない方が良いのかも知れない(だって早く話を進めたいんだもん)。
好美「ちょっと創造主、聞こえているんだけど?」
あらら、気付かれてしまいましたか。大変失礼致しました・・・、さてと話を・・・。
好美「アンタね、登場人物に対する尊敬と話の進行のどちらが大切な訳?!」
そりゃあ後・・・。
好美「えっ?!」
いやいや・・・、勿論前者でございます。大変失礼いたしました!!
好美「分かれば良いんだよ、ただ酔っているからって相手の事をちゃんと見守っているのが恋人ってもんじゃないの?」
そんなもんなんですかね、個人的には「酔ってたら周りなんて見えなくなっちゃうんじゃないの?」と思ってしまうんですが。
好美「あんたそんなんだから何時までもフリーなの、それとも結構酒に弱かったりするの?」
いや・・・、「30歳を超えてからめっきり弱くなって来たな」と思いまし・・・、って何言わせんねん!!
好美「もう・・・、アンタの下らない話はどうでも良いから冷めない内に守のハヤシライスを盛り付けなきゃでしょ?」
それもそうでした、仰る通りです。
ふと好美が守の方を見ると既に盛り付けを終えてしまっていた様に見えた、皿を見てみるとピラフとハヤシライスソースを1つの皿に盛りつけている。
好美「やっぱり一緒にしたんだね、私のアイデアのお陰ってやつ?」
守「そうだな・・・、でも好美は好美でも「元の世界にいた頃の好美」のお陰かな。」
好美「昔の私ね・・・、若しかしてあの日?」
好美の言う「あの日」とは勿論2人が宝田家で真希子の作ったハヤシライスを食べていた日の事だ、守が言うには「確か2人共最初の1杯目は好美が盛り付けた物を食べた様な」との事(ただ記憶があやふやなのが気になるのだが・・・)。
好美「あれ?あの時って私が盛り付けたんだっけ?」
好美も記憶があやふやなんかい・・・。
守「ほら、2人分共同じ様に盛り付けていたっぽく見せておいて好美の分だけ気持ち大盛りになってた時だよ。」
こいつ・・・、俺の気付かない所でそんな細工してたんか。まるでトランプを配る時に自分の分だけ下からカードを抜くみたいな感じだな。
好美「あ、あれね・・・。あれは・・・、加減が分からなかったの。」
守「ふーん・・・、「加減」ねぇ・・・。」
何となく「給食を配るのが下手くそな奴」がよくやる言い訳に聞こえる、まぁ俺の気の所為だったら良いんだけど。
好美「私の分が大盛りだった事は置いといて(さり気なく認めた)、私ってどうやって盛ってたんだっけ?」
守「「ソースをたっぷり楽しみたいから」ってご飯の半分とご飯の周りにたっぷりかけていた様な気がするんだよな、何か贅沢な盛り方に見えたから真似しようと思ってさ。」
好美「へぇ・・・、私って結構センス良かったんだね。」
守「いや好美・・・、自分で言うんかい・・・。」
自画自賛はあんまりしない方が・・・