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ぽかーん・・・
-619 母や恋人との思い出-
元の世界におけるまさかの裏エピソードに思わず空いた口が塞がらなくなってしまう俺、ただ「松龍」のすぐ上が美麗達の居住部分となっていたので昼寝をしていた度に「馬鹿!!」と呼ばれていたとなると何となく可哀想に思えて来る。
美麗「そうだったよ・・・、大抵休みの日に好美や桃とランチを食べに行ってた直前は昼寝をしていたから「馬鹿!!」って起こされていたんだっけ。何となく懐かしいなぁ・・・。」
何となくいい思い出の様に聞こえているが美麗が罵られていた事には変わらない、ただ今は脱線せずに話を進める事を優先させたいのだが大丈夫なのだろうか。
好美「もう馬鹿、空気を読んだら分かるでしょ?」
守「本当だよ、学生時代の思い出に浸るだなんて良い事じゃねぇか。」
いや俺だって偶には懐かしい思い出に浸りたくなる時はあるよ?でも今は「これ以上メラルークを待たせない」事を優先させるべきなんじゃ無いか?
守「それもそうだな、折角のソースやピラフが冷めちゃうし。」
好美「確かにね・・・、でもなんか忘れてるような気がするんだけど・・・。」
守「良いんじゃねぇのか?早く盛り付けて持って行こうよ。」
いやあんたら結構大切な事忘れてまっせ、でも後に回しても問題はないと思うから今は持って行くとしますか。
「時間無制限」だからと言ってかなり時間がかかった料理の調理も今やもう盛り付けの段階、正直ここでミスをしてしまっては今までの苦労が全て頓挫してしまう。「見た目も味の1つ」とはそういう事なのかもしれない、そう言わさんばかりに皿一杯にピラフを盛り付けていく守。もし「ここからまだ工程がある」という事を知らなかったら「これで十分美味そうじゃ無いか、早く食わせろ!!」と駄々をこねそうになってしまう。
美麗「私はルー(今回は「ソース」なのだがスルー)とご飯を半々に盛るのが好きなんだけど今回はどうするの?」
カレーなどを食べる時に結構よく聞かれる話だが今美麗が言った通り皿の上で「ご飯とカレールー(やハヤシライスソース)を半々に盛る人」や「ご飯を島の様に持ってその周りにルーを回しかける人」等がいたりする、ただ今回は違っていた様な・・・。
好美「勿論町中華の店でよくやられているみたいに「上からドバーッ」だよね?」
そういう人もいる、でも今回は違っていたよな?それに好美は守がどうするつもりなのかを知っているはずだよな?
守「うん、「ドバッ」と言っちゃおうかと(棒読み)。」
好美「守・・・、何で(棒読み)なの。」
守「いや・・・、俺はちゃんと「別々にする」って言ったはずなんだけど。」
確かにその通りだ、ただ好美は何となく支障が出ないかと危惧していた様だ。
好美「でもさ・・・、一緒に盛っておかないと家庭的な雰囲気が出ないんじゃない?」
「カツにサクサク感を保つ為」と言っても「別々」にしていては何となく高級な店の雰囲気が出てしまうので「家庭料理」からはかけ離れてしまう、しかし「最高の状態で提供したい」が故に守が考えた通りの方法をとるのが1番なのではなかろうか。
守「「家庭的な雰囲気」か・・・、確かに母ちゃんは一緒に盛ってたよな・・・。」
あれ?この空気若しかして・・・、前言撤回しちゃうの?
好美「ほら、やっぱり「思い出」の料理なんだから「思い出」の通りにするのが1番だよ。」
守「それもそうだな、一緒に盛りつける方法を考えないと。」
好美「因みに真希子さんはどう盛ってたの?守と食べた時みたいにしてたんじゃないの?」
守「母ちゃんが・・・?」
目を瞑って楽しかった学生時代の事を改めて思い出そうとする守、確か好美が家に来た時も同じ様に盛った様な・・・、気がしなかった。
守「いやあの時は好美が自分で盛り付けてたんじゃん、鍋いっぱいに入ってたハヤシライスソースが無くなったのを忘れた訳じゃ無いからな。」
好美「アハハ・・・、そうだっけ・・・?」
守「おいおい、惚けちゃ駄目な空気だろ・・・。」
うむ・・・