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ボケか天然か・・・
-617 見かけと盛り付け-
さほど時間が経った訳でも無いのに恋人が現在何を作っているのかを忘れてしまった様子の好美、ただいつものお惚けである事を信じたいが今は全くもって関係無いのでスルーして話を進めて行こうかと思ってしまう。
好美「何でスルーするの、私はちゃんと「ロースカツを作っている」事を忘れていたもん!!」
覚えているじゃねぇかよ・・・、それに「ちゃんと忘れてる」って何なんだ一体・・・。まさかと思うが守に「一旦忘れておいて」とでも言われたのか?
好美「守じゃ無いもん、あそこにいるADさんだもん。」
えっと・・・、あのADさん・・・。いらっしゃるのか分かりませんけど好美が寸前の情報を忘れる必要ってある・・・、ってこれ確認する必要性を感じないんだが?
守「まぁ良いじゃねぇかよ、いい加減話を進めないといけないんじゃねぇのか?」
待てよ、お前の彼女がいちいち惚けるからこうなってんだろうがよ!!
守「おい、好美だけが悪い訳じゃ無いだろう!!他にも惚けていたやつはいっぱいいたと思うんだが?」
好美「ちょっと・・・、誰が惚けてたって?!」
あかん・・・、話がややこしくなるから此処でストップして話を進めるとするか・・・。
フライパンから取り出した豚ロース肉をバットに入れた守は団扇を『作成』して粗熱を取り始めた、ただ『作成』を使う位なら風系統の魔術(若しくは能力)を『作成』した方が良いと思うのは俺だけだろうか。
守「いや・・・、個人的な意見だけど能力に頼りすぎるのもどうかと思ってな。」
まさかこんな場面で光と守の意見が合致するとは、やはり腹違いと言えど姉弟は姉弟なのだという事を改めて実感させられる。
そんな中でバット自体の冷たさと団扇で起こした風により粗熱を取った豚ロース肉に小麦粉やパン粉、そして卵液を付けていく(因みに衛生上の観点から両手にはビニール手袋を着用している模様だ)。これによりやっと「豚カツを作っている」という実感が湧く、ただ守自身には少し不安になっている事があった様だ。
守「メラルークさんに俺の作った豚カツが通用するだろうか・・・。」
確かに今回の料理を食べるのは他でも無くあの魚人、言ってしまえば「豚カツの名人」と言っても過言では無い。ただ今回は守の作る「思い出と感謝(今回のテーマ)」のこもった料理の審査、そこまで心配することは無いのでは?
守「何言ってんだよ、本気で挑まないとメラルークさんに失礼だろう!!」
何かすいません・・・、まぁ時間無制限なので納得のいくまで試行錯誤をして下さいな。
好美「でもまぁ、本人が泥酔しないうちにだけど。」
好美の言っている通りだとも思うんだがさっき見てみたら泥酔してた気がするんだよな、まぁ俺個人がそう思っただけなんだけど。
好美「大丈夫でしょ、あの人お酒強いっぽいし。」
分からんぞ、「人は見かけによらない」ってよく言うからな?
好美「あの図体だよ、弱い訳が無いじゃん!!」
守「好美、見た目で人の事を判断するのはやめておこう。それよりそろそろハヤシライスを盛り付けなきゃ。」
好美「そうだね、一応聞いておくけど守の家で食べた時もそうしてたと思うから最初からピラフにハヤシライスソースをかけた状態で出す感じで大丈夫?」
守「いや、今回は別々で出すつもりでいるんだ。うっすらだけどピラフにも味付けをしているからその味も楽しんでもらわないとね。」
好美「そっか・・・、でもさ・・・。」
守「ん?どうした?」
ふと好美が指差した方向へと振り向く守は何となく嫌な予感がしていた、まさか・・・。
好美「美麗がフライングして思いっきりかけちゃってるよ?」
守「嘘だろ・・・、外で呑んでたんじゃねぇのかよ・・・!!」
もうちょっとだけ我慢しようよ・・・