616
お肉は大丈夫ですか?
-616 加熱はちゃんとしよう?-
改めて「料理を作る際には細心の注意を払わなければならない」という事を実感させられた守は一先ずフライパンの中を掻き混ぜて焦げ目の確認を行った、その上で火が通り過ぎていないかを肉の色から判断していった様だ。
好美「豚肉なんだからしっかりと火を通さないと食べれないじゃないの、大丈夫な訳?」
飲食店のオーナー(というより一般常識)として「豚肉には寄生虫などが潜んでいる可能性があるので調理をする際には十分に加熱して必要がある」という事を十分に理解している好美、食品衛生の観点から食を安全に楽しめる事を優先しての発言を行った様だが本人自身が酔っぱらっているので大丈夫なのかが正直言って分からない。
守「気遣い有難う、勿論大丈夫だから。ただここで火を通し過ぎるとマズいんだよ。」
決して恋人の事を気遣っての発言では無いと思われるが、守自身は好美の気持ちが嬉しかった様だ。
好美「どういう事?」
開いた口が塞がらない好美、ただ「松龍」でアルバイトをしていた時に「店主で美麗の父親である龍太郎が調理を行う様子を見ていなかったのか」と思わず聞きたくなってしまうのは俺だけだろうか。
守「あれ?龍さんはこうしていなかったの?」
あらま、俺だけじゃ無かったみたいだ。
好美「流石に忙しくてね、調理場の中を覗き見る余裕なんて無かったのよ。」
本人はこう言っているが守が「松龍」へと行った時に好美は大抵暇そうに賄いを食べていた様な気がするのだが、違ったか?
守「あのな創造主、「偶々そうだった」って事も十分にあり得るって何で思わないんだよ。」
好美「そうだよ、飲食店で働く人達が休み無しにずっと忙しく働ける訳が無いじゃん。あんたはそんな事出来る訳?」
いや出来ないです・・・、大変申し訳ございません。
好美「じゃあそんな事言っちゃ駄目でしょ、めっ!!」
うぅ・・・、まさかこの歳になって「めっ!!」と言われる様になるとは・・・。これは案外攻撃力が強いぞ・・・。
守「それに美麗の提案で「松龍」は昼間に中休みを取る様にしていたんだよ、そうでないと夕方からの営業に差し支えるからな。」
好美「え?何で守がそんな裏事情を知ってんの?」
守「いやいや・・・、美麗自体が言っていたじゃん。」
好美「あれ・・・?いつの話だっけ?」
元の世界での記憶はハッキリとしているはずなんだが誰だって全てを覚えている訳では無い、これはどんな人物にも十分あり得る話ではなかろうか。
守「昔過ぎて忘れちゃったか?ほら・・・、香奈子ちゃんの引っ越しの時に言ってたと思うんだけど。」
好美「香奈子の引っ越しね・・・。あ、あの時か。」
本当に思い出したのかが疑わしいが今はそっとしておくのが良いか、そうでもしないと話が進んで行かない(改めて言う事でも無いか)。
好美「それで?火が通り切る寸前の豚肉をどうする訳?」
守「ここに・・・、ビールを注ぐっと・・・。」
そう、守は豚ロース肉をビールで煮込もうとしていたのだ。ただこれも豚肉を柔らかくする程度で止めておき、すぐにフライパンから出してしまったらしい。
好美「ここでもすぐに出しちゃって大丈夫なの?」
守「うん・・・、というかこうしないとやっぱりまずいんだ。」
好美「「こうしないとまずい」ね・・・、でもちゃんと火を通すんだよね?」
守「勿論、俺が今何を作っているのかを理解しているなら理由が分かるはずだよ?」
好美「えっと・・・、何を作っていたんだっけ?」
おいっ!!




