613
大好物を前にすると誰だって笑ってしまうもの
-613 材料なんですよね?-
徐に買い物袋から買って来た缶ビールを取り出す好美、その表情が恍惚に満ち溢れていたのは今に始まった事では無いしやはり予想通り。
好美「ほら、守も。」
守「う・・・、うん・・・。」
「まだ料理を提供してもいないのにもう呑むのか?」と不安げな表情を浮かべる恋人にもビールを渡す、ただ今更言う事でも無いのだが好美は先程からずっと大好きなビールをお楽しみ中なのである。
守「えっと・・・、前祝って事なのかな。ただ俺の作ったハヤシライスでメラルークさんがどういう反応をするか想像できないけど。」
好美「何言ってんの、さっき「大切な材料の1つ」って言ったじゃん。」
守「そうだよな・・・、どうするつもりなんだ?」
好美の提案について全くもって想像がついていない守、今更言う事では無いかも知れないのだがどうやら好美はただの酒好きではない様だ。
好美「ちょっと・・・、今失礼な一言が聞こえたんだけど?」
気の所為ですよ、「いちビール好きとして美味しくビールを呑みたいの」は俺も好美さんと同じですから。という事はあれでしょ?「やっぱりビールに合う美味しい料理を追い求めたくもなる」って事なんでしょ?
好美「分かってんじゃん、守よりは察しが良いみたいだね。」
いやそれ程でも・・・、褒めても何も出ないですよ(後でビールを2ケース程送らせて頂きますね)?
好美「流石は創造主さん、私達って結構気が合うのかも知れないね。」
意外とそうかも知れないですね、正直こんな気持ちになったのは初めてですよ(ビール追加しときますね)。
守「好美・・・、趣旨が何処かへと行っちまっているんだが。」
好美「そうだよね、忘れてた(ちぇっ、折角楽しくなって来たのに)。」
好美さん、今は魔力保冷庫(冷蔵庫)で冷やしておいて後で存分に楽しめば良いじゃないですか。やはりビールはキンキンに冷えて無いと美味しくないですから、ね?
好美「確かにね、でもそんな事を言っているとドイツの人達に怒られちゃうんじゃないの?」
仰る通りです、あちらの方々はビールを常温で呑むそうですからね(と聞いた事があるだけ)。でも好美さん、ここは地球上では無く異世界ですから問題無いですよ。
それはさておき、守さんもお待ちかねの様ですから調理を再開しても良いのでは?
守「そうだよ、このビールをどうしようってんだよ。」
好美「そうだね・・・、守は「松龍」のロースカツがどんな物だったか覚えてる?」
守は元の世界で過ごした学生時代の事を思い出した、確か「松龍」のロースカツって・・・。
守「厚みがあるのにめっちゃ柔らかかった様な気がするな、しかもソースをかけなくてもしっかりと味がしていたよな・・・。」
好美「そう、実はというとそれには秘密があるのよ。」
守「秘密・・・?」
いくら学生時代のたまり場で元バイト先でもある中華居酒屋だと言っても流石に「企業秘密」にしたい事位はあるはずだ、そんな易々と言っても良い事だとは・・・、思えなかったんだが?あれま、丁度良くそこにいるのは美麗さんじゃないですか?
美麗「そう、私が提案してからずっとパパがやってた事があるの。」
守「龍さんが・・・?」
まさか美麗のアイデアを活かしたが故の美味しさだったとは、教えて貰えるなら是非ご教授願いたいが大丈夫なのか?
美麗「何言ってんの。「駄目」って言っても既にビールを開けちゃって・・・、ってあれ?」
好美「ごめん、我慢出来なくて呑んじゃった。」
美麗「もう・・・、相変わらずなんだから・・・。私にも1本頂戴!!」
お前も呑むんかい!!