606
やっと出て来たけど・・・
-606 好美の表情-
恋人のまさかの行動に睨みを利かせながら守の『アイテムボックス』から出て来た好美、ただ好美よりも守との付き合いが長い上に今回は本当に偶然その場に居合わせただけの美麗には罪はない事だけは確かである。
内心では冷静だった好美は一先ず美麗がこの場にいた理由を整理してみる事に、明らかに自分の方に落ち度があるので友人としてではなく店のオーナーとして責任を取らないといけないと思ったからだ。何よりも大切で決して失ってはいけない「お客様からの信頼」に傷を付けかねない事態になってしまっている、正直言ってこれは一大事。
好美「美麗、申し訳ないんだけどちょっと聞かせて貰っても良い?」
いつになく(?)真剣な表情をする好美に少々たじろいでしまう美麗、やはりまだ先程守に向けていた睨みを忘れていないが故だろうか。
美麗「う・・・、うん・・・、良いけど何?」
好美「ごめんね、大した事じゃないのよ。美麗が春巻きを注文してくれたのって何分前か覚えてる?」
美麗「確か・・・、15分前位だと思うけど。」
好美「15分前ね・・・。」
顎に手をやって考え込む好美、その表情にはいち店舗のオーナーとしての貫禄が見え隠れしていた様な・・・(いやしていなかった様な)。
好美「それってタッチパネルを使ってくれた?」
美麗「勿論だよ、席に座ってすぐに「注文にはタッチパネルを使ってね」ってヌラルに言われたもん。」
好美「そっか・・・、ありがとう。」
会話の流れから察するに混沌龍はしっかりと仕事をこなしている、となると本人自身は「シロ」だという事だ。
好美「お客さんへシステムについての説明をちゃんとしてるね、この前私が言ってから徹底してるみたいだから大丈夫か。」
友人の言葉を聞いて一安心する好美、しかし問題が解決した訳では無いので調理場の端へと向かう事に。
好美「えっと・・・、15分前って言ってたっけ・・・。」
調理場の端に設置してある注文伝票のプリンターを見てみると確かに15分前に「春巻き」の注文が入っていた、どうやら美麗も嘘は言っておらず「シロ」の様だ(と言うかお客さんを疑っちゃ駄目でしょ)。
好美「・・・、という事は犯人は1人だけか・・・。」
しかし今は美麗が注文した「春巻き」を作る事が先決、好美は自ら魔力保冷庫へと向かい保管していた春巻きを揚げ始める事に。
好美「ごめんね美麗、完全にこっちの落ち度だからお詫びに何かサービスするね!!」
美麗「大丈夫だよ、忙しいんでしょ?」
好美「今の美麗はお客さんなんだから気にしないでよ、ただ良かったらサービスの分の料理を今ここで決めて貰っても良い?」
美麗「良いの?何か悪いね・・・。」
好美「だから大丈夫だって、すぐに作るから何でも好きな物言ってよ。」
美麗「じゃあ・・・、「アレ」が食べてみたい。」
美麗が指差した先には守が調理を行っていたあの「ハヤシライス」が、しかしこれは料理対決用の物なので好美の一存で提供する訳にはいかない。
守「別に構わないと思うよ、どうせいっぱい出来ると思うから。」
好美「そうなの?じゃあ大丈夫だ、春巻きもすぐに作っちゃうからあと少しだけ待ってて。」
どうやら先程守に向けていた怒りはいつの間にか何処かへと行ってしまった様だ、しかし好美は別の方向へと睨みを利かせていた。理由はただ1つ・・・。
好美「「15分前にちゃんと注文が入っていた」という事はデルアか・・・。」
そう、前述した通りに注文が入ってから3分以内に準備を始めていない店長が今回の犯人なのだ。あらら・・・、このまま行くと大幅に減給かも知れないな・・・。正直言ってちゃんと生活が成り立っているのかが心配だが今はそっとしておこうか・・・。
脱線防止・・・