597
好美、楽しんでやがる・・・
-597 宝田家流(というか自己流)-
恐らく『アイテムボックス』から取り出したと思われるボタンを押して解答権を得た好美は思いついた通りの回答を出した。
好美「えっと・・・、ミネストローネだよね!!」
守「だぁ~っ!!何でそうなるんだよ!!今までそんなの作った事あったか?!」
勢いよくズッコケてしまった守、火にかけていた寸胴に影響がないのが不幸中の幸いだろうか(?)。
そんな中で守はある事に気付いた、メイン食材と言っても過言では無い「光のトマト」が先程より少なくなっている。何となく嫌な予感がしたので「じ~・・・」っとトマトのある方向を睨みつけていると下から何者かの手が伸びて来てトマトを取っていた、守がその手を掴むとしゃがんでいた犯人は慌てて立ち上がろうとしてこけてしまった。
守「ヌラル・・・、何やってんだよ・・・。」
ヌラル「仕方ねぇだろ、腹減ってたし美味そうだったからさ・・・。」
混沌龍を責めてもトマトが元に戻る訳では無いし誰だってつまみ食い位したくなる時だってある、犯人に言われた通りに「仕方が無いか」とため息をついた守は一先ず残っていたトマトの数量を確認する事に。
守「余分含めて15個採って来ておいて正解だったかもな(採りすぎとちゃうか?)、ヌラルがつまみ食いをした後でも8個は残っているみたいだから何とかなるか。」
「いやあいつ半分も食ったのかよ、流石に「つまみ食い」レベルで済まされる話じゃねぇぞ」と思う俺を横目に守は調理を再開した(改めて言う事では無いが守には俺の姿は見えていない)、一先ず持参したトマトを潰してペースト状にしていく。その横で寸胴とは別のフライパンに赤ワインのみを入れて火にかけてアルコールを飛ばしていく(旨味と香りのみを残したい時には最適な方法なのでは無いだろうか)、すると調理場や店内に良い香りが漂い始めた(何となく嫌な予感がするんだが大丈夫かな・・・)。
デルア「良い香りだな、ただ他に野菜は加えないのか?」
守「そうですね、宝田家はいつもこう作っていました。」
デルア「成程な、それぞれの「家庭の味」は大切にしないといけないもんな。コンソメを入れるのもその「宝田家流」ってやつなのか?」
守「いや、これは普通にレシピに載っていました。あ・・・、そろそろ寸胴の中を見ないといけないかもな・・・。」
デルア「ん?そうなの?」
2人が一緒に寸胴の中を見てみると水分が飛んで玉ねぎも良い具合の色になっていた、そこに潰したトマトとアルコールを飛ばした赤ワインを加えていく。
デルア「また良い匂いがして来たじゃ無いか、これってもしかして・・・。」
守「そうです、バターと塩胡椒を加えて煮詰めたら好美が好きだったハヤシライスの完成です。」
デルア「これが・・・、好美ちゃんの好物なの?俺が見た感じは作り方が滅茶苦茶だったけど大丈夫な訳?」
守「ウチは結構自己流が多かったですから、「終わりよければすべて良し」って奴ですよ。」
全ての作業を終えて笑顔を見せた守は焦げ付かない様に様子を見ながら寸胴の中身を煮込んで行った、先程以上の良い香りが漂っていく。すると十分あり得る事態が起きてしまった、これに関しては決して忘れれてはいけない事が1つ。
客「デルアさん、「ハヤシライス」ってメニューに載ってたっけ?」
この「暴徒の鱗 ビル下店」は24時間営業、何時如何なるタイミングでお客さんが入っていてもおかしくはないのだ。
デルア「いや、うちは基本的に中華だから乗って無いけど。」
あら、どうやらこのお客さんはデルアの知り合いの様だな。
客「じゃあ何でこんなにいい香りがしてんの、おかしくない?」
デルア「こらこら、うちは何時でも良い香りをさせてるぞ?」
客「言葉足らずで悪かったよ、ただこの良い香りのするハヤシライスを俺も食べたいんだけど。」
やっぱりな・・・、お客さんに「食べてみたい」って言われてもおかしくは無いよな。
デルア「これはちょっと事情があって作っているだけなんだって、今日だけだよ。」
お客さんの気持ちも分からなくも無いけどね