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接客業は大変だよね・・・
-595 お客様第一主義-
好美が怒りを露わにするのも無理は無い、小売業や飲食業の人間として「お客さんの事を第一に考える」事は最優先とされる(今の時代においてはカスタマーハラスメント等の関連で従業員も守られるべきなのだが)。ましてやこの「暴徒の鱗 ビル下店」は客席のあるホールから従業員が作業を行う調理場が丸見えだ、どういう事かと言うと「注文が通っているはずなのにいつになったら調理を始めるの?このお店は無駄なお喋りで客を待たせる所なの?」という悪いイメージが付いてしまうという事だ。好美は自らが所有するこの店に悪評が経つ事を絶対に避けていた、「お客さんあってのこのお店だから」という事を常に念頭に置いて仕事(と言うよりお手伝い)をしていたのだ。
オーナーは調理場にある機械から先程自分が調理したオーダーの伝票を再び出して店長を叩きつけた、この様子だと相当お怒りの様だ・・・。
好美「もう、デルアったら「このマシンから伝票が出たら3分以内に準備をして調理作業を始める事」っていつも言ってんじゃん!!この伝票を見て、どれだけの時間が経っているか分かる?!この店を始めた頃からのルールだよね、まさか忘れちゃった訳?!」
デルア「いや・・・、そういう訳じゃ・・・、ごめん・・・。」
守との話に夢中になっていたので完全に時間を忘れてしまっていたデルア、これは完全に店長のミスだと言っても良い。
しかし怒りの矛先が向いていたのは元黒竜将軍だけでは無かった、好美は自分の能力で半ば強引にこの店の制服へと着替えさせた恋人を睨みつけた。
好美「守も守だよ、衛生面での配慮とは言えうちの制服を着ているんだからそれなりに考えて行動してよね?!」
守「す・・・、すんません・・・。」
好美「謝っている時間なんてあるの?!それとも「すんません」って言ったら料理が完成する訳?!」
守「そ・・・、そんな事無いです。今すぐ作らせて頂きます・・・!!」
何となくだが好美の言葉にいつも以上の圧がある様に感じた守は恋人の顔と手元を改めてチラッと見てみた、そして「やはりか・・・」と思いながらため息をついていた。
好美「何?!私の顔を見て何でため息なんかついてんの!!私の顔に何か付いてる?!」
守「いや・・・、何も付いておりませんです。調理を開始させて頂きます・・・。」
守が「話が長くなるかも知れない」と『アイテムボックス』に片づけていた食材を取り出しているとデルアがこそこそと近づいていた、因みに好美は再び事務所へと入って行った上に注文伝票は1枚も出ていない。
デルア「守君、何かあった?」
守「えっと・・・、どういう事ですか?」
デルア「いや、ため息なんかついていたから心配になっちゃってさ。」
実は先程からずっと守の様子を伺っていた店長、しかし守が気付いて欲しかったのは自分では無くオーナーに関してだった様だ。
守「あの・・・、デルアさんは気付かなかったんですか?」
デルア「「気付かなかった」?何に?」
当然、好美の様子についての事である。
守「本当に気づいてなかったんですね、好美がかなり酔っていた事に。」
デルア「えっ?!好美ちゃんって酒に酔ってたの?!」
守「そうです、何となく圧が強かったし顔が赤かったので嫌な予感がして右手を見てみたらこっそり持っていた缶ビールを『アイテムボックス』に隠していたんですよ。恐らく先程注文された分の料理も吞みながら作っていたんだと思われます。」
デルア「もう・・・、好美ちゃんったら人の事言えないんだから・・・。」
ただこの一言はまずかった様だ、2人の背後から「ボキボキ」と指を鳴らす音が聞こえて来た。音の主は勿論、例の「酔っ払い」である。
好美「2人共・・・、私がいなくなってから楽しそうにしてるよね・・・。」
デルア「い、いや・・・、これは料理の相談を受けていたんだよ!!なぁ、守君!!」
守「そうだよ、やっぱりプロのアドバイスなんてなかなか聞く事は出来ないからね!!参考にと思って話を聞かせて貰っていたんだよ!!」
しかし2人の嘘はすぐにバレてしまう、根拠は2つ。
好美「デルアは守が何を作ろうとしているのか知っているの、それと守はナルリスさんのアドバイスは聞かなかったのに何でデルアのアドバイスは聞く訳?!」
その前に仕事中に吞むなや




