593
ルーズ過ぎるのもどうかと思うんだが?
-593 社員とバイト-
「流石にマズイ」と反省した拉麵屋のオーナーが調理場にある社外秘の書類をせっせと片付けている横で守は明らかに動揺していた、「まぁ能力(魔法)により突然自分の衣服が変わってしまう事なんて十二分にあり得る事なのだがこうなるのが一般的なんだろうな」と改めて考えさせられてしまう。
ただ守の動揺を別の理由かと思ったのか、皿洗いをしていた店長が声をかけた。
デルア「どうしたんだ、もしかしてウチの制服が気に入らないのか?」
守「い・・・、いえ・・・。そんな事無いです、それどころか元の世界にいた時から「カッコいい、1度着てみたい」と思っていた方なんですよ。」
デルア「じゃあどうしてそんなに不満げなんだよ、サイズが合わないというなら奥の部屋にあるから変えて来てもいいんだぜ?」
守「サイズは大丈夫なんです、恐らく好美が俺に合わせて選んだと思うので。」
元々好美の『状態変化』で制服姿になったので「選んだ」と言うより「能力により体に合わせた姿にさせた」という方が正しいのではなかろうか、しかし守と俺の考えが一致するとは限らない。
デルア「「サイズは大丈夫」と言うなら何が駄目だと言うんだ?」
皿洗いをしていた手を止めて守の姿をまじまじと見始めたデルア(バイト居ねぇのかよ)、ただ本人からすれば普段から見慣れていた物なので何の違和感も無かった様だ。
デルア「特に・・・、問題は無いみたいだが・・・?」
守「デルアさん、こちらを御覧頂けますか?」
デルア「ん?何かある?」
守がデルアに右手を差し出すと掌の上にはまさかの「あれ」があった、まさか「あれ」まで用意していたとは・・・。
デルア「あらまぁ・・・、これ社員用の名札じゃないの。」
そう、「あれ」というのはデルアの知らない所で好美がこっそり用意していた守の名札だったのだ。しっかりと「暴徒の鱗 宝田 守」と記載されている。
守「え?!これ社員の方専用なんですか?!」
デルア「ああ・・・、というか俺達の様に役職のある管理職が身につける様の名札なんだよ。ちょっと待ってくれるかい?ヌラちゃん、ちょっと来てもらえる?」
店長に呼び出されたのは貝塚学園大学料理科で学びながら好美の店でアルバイトをしている混沌龍のヌラル・ブラッディだった(いつ振りの登場だよ)。
ヌラル「はーい、オーダー聞いたらすぐ行きます!!」
すぐ傍にあるテーブル席のオーダーを取るその姿からここでのアルバイトにすっかり馴染んだ事が見て取れる、どうやら元黒竜騎士と黒龍族の相性が良いのは本当らしい。
そんなこんなでハンディ端末でオーダーを通すと調理場に戻って来た。
ヌラル「どうしたんだよ、デルアさん。急に呼び出すなんて珍しいじゃねぇか。」
調理場に入った瞬間、急に口調を変えた(と言うより元に戻した)ヌラル。これは飽くまで推測なのだが「フレンドリーな環境で楽に仕事が出来るように」と好美が決めたルールなのだろう、「調理場含むバックヤードでは緩くする分ホールでは気を引き締める」と言った所か。
デルア「悪いね、実はヌラちゃんにお願いがあってね。良かったら名札を外して見せてくれるかい?」
ヌラル「それ位ならお安い御用だが・・・、ん?何で守がここに?!しかもウチの制服姿なんだ?!」
今頃気付いたのかよ、龍って案外どん臭ぇんだな。
デルア「これは好美ちゃんが無理くり着せた物なんだ、それより名札をお願い出来るかい?」
ヌラル「そうだったな、これで良いのか?」
ヌラルが差し出した名札は守やデルアが身につけている物と違ってパソコンで印刷した紙をプレートで挟み込んでいる簡易的な物だった、デルアが言うには事務所のパソコンで作成しているとの事。
まぁそれは良いとして・・・、オーダー通っているんだから早く作れや!!
また話が進まねぇや・・・




