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好美の提案は、実はほんの冗談だった。
-59 斬新な登場-
好美は冗談のつもりで「同棲してみれば?」と言ったつもりだったが、久々の再会を果たした2人はその場の流れからかなり真に受けていたみたいだ。
美麗「好美、いくら何でも「はい、そうですか」でスタート出来る物じゃないと思うんだけど。」
秀斗「そうだよ、荷物の移動は『転送』や『アイテムボックス』で何とかなるとしてもバルファイ側の不動産屋にどう説明するんだよ。」
冗談ではなくなってきたと察した好美はほぼやけくそ気味の勢いで話を進めだした。
好美「じゃあ、そのバルファイ側の不動産屋に話をつければ良いって訳よね。」
美麗「確かにそうだけど、すぐに行ける所じゃないでしょ。」
貝塚財閥(結愛)のお陰で3国間における交通の便はかなり発達したが、つい先程この世界に転生したばかりな上に既に呑んでしまっている美麗にはどう答えても不可能だった。
好美「じゃあ、こうすれば良いじゃん。」
そう言うと好美は『アイテムボックス』に手を突っ込んでゴソゴソと何かを探し始めた。
守「おいおい、まさか・・・。」
その「まさか」だった、好美が腕を引き出すと中から・・・。
男性「あ、どうも。」
と言いながらバルタンらしき30~40代位でスーツ姿の男性が出て来た、そう、この人がバルファイ側の不動産屋の社長だったのだ。
社長「好美さん、早くないですか?私これの為に1ヶ月有給を取っているんですけど。」
好美「ごめんなさい、友人の事で相談がありまして。」
社長「いや・・・、仕事の事は店にいる妻に任せてあるんですけど。」
好美「すみません、何分急だった物で。」
言ってしまえば好美自身が原因を作ったのだが、今はそっとしておこう。
秀斗「そんな所にいたんですか、こりゃ家賃を払いに行ってもいない訳だ。」
美麗「でも、何で入っていたんです?」
何でもありのこの世界でも人が『アイテムボックス』の中にいるだなんて正直「前代未聞」と言っても過言ではない。
好美「この前、このマンションの事でこの人の所に行った時ね・・・。」
数日前の事だ、好美は社長の店でお茶を飲みながら契約の更新をしていた。
好美(回想)「こちらは手土産です、皆さんで召し上がって下さい。」
社長(回想)「すみません、お気遣いありがとうございます。それにしても今のが『アイテムボックス』ってやつですか?羨ましいですね。」
好美(回想)「何でも入るから便利ですよ、社長さんにも『付与』するので後で使ってみて下さい。」
社長(回想)「ただね・・・、中はどうなっているんです?」
好美(回想)「いや・・・、私も見た事無いんでどう説明すれば良いか・・・。いつもこうやって手を突っ込んでいるだけですから。」
すると次の瞬間、社長が好美の腕の先に頭から突入してすっぽりと入ってしまった。
好美(回想)「な・・・、何やってるんですか!!ど・・・、どうしよう・・・。」
社長の行動に驚きを隠せない好美、一先ず取り出し口を無理矢理こじ開けて頭を入れてみた。中では異次元のカラフルな空間が広がっていて、好美の私物等が散らばっていた。
好美(回想)「社長さん、大丈夫ですか?」
数秒経過した後、感覚的にかなり離れた所から返事が聞こえた。
社長(回想)「好美さん、この中凄く快適ですよ。まるでダンラルタ王国のバカンスです、なんだか泊まりたくなって来ました!!」
好美(回想)「勘弁してくださいよ、お店の人が困ると思うんで帰ってきてください。」
流石に社長不在では処理しきれない仕事も多いはずだが・・・。