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安正は、今どうしているんだろう・・・。
-58 心中-
懐からスマホ(らしき物)を取り出した女神は、何故か少し南部よりの阿波弁混じりで話していた。相手が徳島関連の神なのだろうか・・・。
クォーツ「ん?うん・・・、うん・・・、ほれ、ほんまけ?!え?!我がから言うんえ?!ほれはほうやけんどな・・・、しゃあないな・・・。」
クォーツの表情からあまり良い情報が来なかった事を察した一同・・・。
守「あの・・・、安正は・・・?」
クォーツ「えっとな・・・、凄く言いづらいんだが好美のはとこである森田真美と良い感じになっているみたいだぜ・・・。」
好美「えっ?!真美とですか?!」
女神が言うにはきっかけは美麗の葬儀での事だったそうだ。これもまた偶然だが、元々安正本人にとって「高嶺の花」と言えた美麗の死による相当な辛さで泣き崩れてしまった安正を気遣って介抱した真美に安正本人が惚れてしまったのだという。
クォーツ「まぁ・・・、あれだ。俺には全てを理解する事は出来んが男特有の性格というやつじゃねぇのかな。一度でも優しくされた女に惚れやすい奴って多いじゃねぇか。」
きっとこの感情は好美が死んで間もない頃の守にも、そして下手をすれば秀斗を失ったばかりの美麗にも言えた事だったのかも知れない。愛する人を失った辛さというのは、人生で最も大きい物だと共通して言える事だ。
美麗「やっぱり辛い想いをさせちゃったんだ、私って最低な人間だね。生きてる価値なんて無かったんだ。」
美麗の発言に怒りを露わにしたのは他でも無い、心臓をあげた秀斗だった。
秀斗「馬鹿な事を言うな!!もしも美麗が言った通りだというなら、死んでお前の命を繋げた俺はどうなるってんだよ!!」
美麗「何よ!!あの時、私の下から離れて泣かせたのは秀斗じゃん!!本当は死にたかった!!生きていたくなかった!!正直言って訳が分からなかった、どうして私なんかに生きていて欲しかったの?!どうしてあのまま死なせてくれなかったの?!」
すると好美が早歩きで美麗へと近づき強くビンタした、こんな事は初めてだった。
好美「馬鹿!!本当に分かって無いのは美麗じゃない!!どうして秀斗君がひき逃げにあったと思う?!あんたの事を龍さんから聞いてどうすれば美麗に幸せなクリスマスの思い出を作れるかをずっと考えてたからよ!!一瞬一秒、ずっと美麗の事を考えていたから周りが見えなくなってたから事故に遭ったの!!
確かに、結果は良かったとは言えないよ、でもずっと悩ませていたのは美麗なんだから!!最後の最後まで美麗の事を考えていたんだから!!
あの日、秀斗君の葬儀に行かなかったあんたと、さっき映像に映っていた安正君の心は同じだったはずでしょ?!きっと「受け入れたくなかった」って事じゃないの?!それ位、美麗も秀斗君も、ましてや安正君も互いの事を愛していたって事じゃないの?!」
美麗「好美・・・。」
好美「元の世界でもこっちでも、望んだ人生を全うした人がいたなんて私は聞いた事無い。今でも悔やんでいるの、喧嘩して口を利かなかったまま守と離れちゃった事。誰だって自分の置かれた運命と戦いながら、そして抗いながら生きているはずだよ。あんただってそのはず、秀斗君や美麗の死は決して誰も望まなかった。でも信じてたから、お互いまた会えるって信じてたからまた会えたんじゃないの?!」
美麗は腕で涙を拭った後に重い口を開いた。
美麗「好美の言った通りだよ、言ったまんまだよ。だって私は秀斗の死を受け入れた訳じゃ無い、私自身の死だって受け入れた訳じゃ無い。でもきっと前を向こうって決意する事が出来たから私達は再会出来たんだと思うの。多分あのままリストカットで死んでたら、私は別の世界に飛ばされていただろうね。ある意味、家事を起こした店員さんに感謝かも。」
好美「馬鹿、何言ってんのよ。下手したらあんたの家が無くなってたかも知れないのに。」
美麗「好美、大切な事に気付かせてくれてありがとう。」
好美は気を取り直して美麗の新生活スタートへの手伝いを再開した。
好美「そう言えば今、秀斗君は何処に住んでいるの?」
秀斗「バルファイ王国のマンションだよ、仕事はこのネフェテルサだけど。」
好美「じゃあ、いっその事美麗とこっちに住めば?家賃安くしておくからさ。」
まさかの同棲生活開始に開いた口が塞がらなかった2人、これからどうなるのだろうか。
異世界に来たばかりの美麗には刺激が強すぎやしないだろうか・・・。