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別に守の事を蔑ろにしているつもりはないので悪しからず
-579 本来の目的は早めに達成しておくべきだ-
家庭菜園に仮設された取調室のセットで好美と共に「一柱の神」の三女がいつもの様子からは想像できない様なボケをかましている中、外では守が今回の目的を果たそうとしていた(スッとやれよ・・・)。
守「ね、姉ちゃん・・・、どれも美味そうだね。」
畑の持ち主である光を未だに腹違いの姉だと思えないのか、何となく「姉ちゃん」と呼びづらそうにしている模様。「それなんだったらいっその事以前の様に「光姉ちゃん」に戻せば良いのに」と思ってしまうのは俺だけだろうか。
光「でしょう、常に沢山の野菜や果物が育っているけど早く収穫してしまわないと大変な事になっちゃうからお手伝いお願いね?」
実は「流石に何もせず姉が丹精込めて作った野菜をタダで手に入れる訳にもいかない」と守自ら収穫の手伝いを志願したという、世の中「只より高い物はない」と言うので当然の事と言えばそうなのかも知れない。
守「分かったけど・・・、これ全部収穫すんの?」
光「当然じゃない、新鮮なうちに収穫してナルのお店に持って行かないと駄目でしょう?あ・・・、でも守が持って行く分はちゃんと確保するから安心してね?」
守「助かるよ、姉ちゃんの協力が無いと今回の料理は完成しないからさ。」
光「大袈裟な事言ってないで早く収穫しちゃうよ、でないと本当に大変な事になっちゃうから。」
燦燦と照り付ける太陽のお陰で多くの野菜がすくすくと育っていた、どれも食べ頃と言っても良いだろう。正直すぐ傍にある小川の水でサッと洗っただけの状態で食べてみたいと誰もが思ってしまう位だ、やはり採れたての野菜の美味さを知るにはそれが1番だと言っても良い。
守「さっきから気になっていたけどどうして「大変な事になっちゃう」の?」
光「あんた・・・、好美ちゃんと一緒に住んでいるのに分からないの?」
ああ・・・、そういう事か・・・。
守「創造主まで何を隠しているってんだよ、勿体ぶっていないで教えろって。」
そんなに知りたいならその野菜を収穫せずにそのままにしておけよ、ただ今回の料理が作れなくなるけどそれでも良いんだな?ですよね・・・、光さん?
光「まぁそういう事よ、あんたも分かってんじゃない。」
守個人は「今回の料理が作れなくなる」というヒントから「このまま畑で放置し続けるとどんなに美味しそうに育った野菜でもいずれかは腐ってしまう」という考えを導き出した、確かに間違ってはいないのだが今回においては別の理由と言っても良い(寧ろそれしかない)。そんな事を言っていると家に隣接しているレストランで妻の採った野菜を待つ吸血鬼から『念話』が。
ナルリス(念話)「光、収穫は順調かな?」
光(念話)「守が手伝ってくれているから何とかね、それで何かあった?」
ナルリス(念話)「最近熱中症が流行っているからあまり無理しないで欲しくてさ、でも早く収穫しないと騒動になり兼ねないからと思ってさ。」
光と同様の事を言っているナルリス、どうやら旦那も経験している事なので「あれの事」で確定だと言えよう。
光(念話)「何よ、煽っているつもり?そう思うなら偶には手伝ってよ。」
ナルリス(念話)「そう聞こえてしまったなら謝るよ、お詫びとしては何だが今オラちゃんに頼んで冷たい物を用意してもらっているから待っててね?」
光(念話)「ちょっと、頼むだけ頼んでナルは何もしないつもり?」
ナルリス(念話)「俺は店の仕込みもあるし正直ドルチェはあまり得意じゃないからね、ただオラちゃんの作るスイーツは美味しいから期待してくれても良いよ。」
光(念話)「ありがとう、もうちょっとで収穫も終わるはずだから野菜持って行くね?」
ナルリス(念話)「分かった。お願いしま・・・、ってあれ?もうこんな時間なの?」
光(念話)「何?まさか・・・。」
その「まさか」である、家の玄関先で夫妻が恐れていた事が今起ころうとしていた。
ガルナス「お母さん、私もメラもお腹空いてるから今採れる野菜全部食べて良い?」
光「ガルナス、部活はどうしたってのよ。それに帰って来たら先ずは「ただいま」でしょ?」
やっぱりか・・・