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頼りの綱である古龍が降りて来た。
-57 神の失態と元々の目的-
数秒後、天空から大きな龍が降りて来た。美麗もこの世界ではごく普通の事なんだと思い、冷静な表情をしていた。まぁ、「一柱の神」が降りて来るのが普通の事とは言えないのだが。
話の流れから3人は、降りてきた龍が『人化』する前にクォーツ・ラルーだとすぐに判断した。しかし、クォーツ本人にとっては別の問題が発生している様だ。
クォーツ「悪ぃな、喧嘩のシーンなんて出しちまってよ。いつもはあんなんじゃねぇんだ。」
クォーツは3人に気を遣っていた、ただ好美はクォーツに対して全く別の心配をしていたらしい。
好美「クォーツ神様、今夜は仕事じゃないんですか?確か、週一で食べてる光さんのカレーの日だったはずですが。」
クォーツ「おっと忘れてたぜ、この前休日出勤したから今夜振替休日だって光さんに言っておかねぇと。先月も同じ事やらかしちまってめっちゃ怒られたんだよな。」
龍だからが故か、それとも他の者にも人気だからか、毎週かなりの量のカレーを作る事になるので休みの場合に事前に言って欲しいと光に念押しされていた様だ。ただ、今日はその手間も省けた様で・・・。
光「話は聞きましたよ、じゃあ今夜はお供え(という名のカレー鍋)は必要無いんですね。」
これは本当に偶然なのだが、数か月程前からラリーの店で作ったサンドイッチ等を「(相変わらずセンスの欠片も無いネーミングの)コノミーマート」に卸す様になり、今日はその配達を光が担当していた。
光「でももうクォーツ神様が食べる前提で作っちゃったんですよね、いつも渡しているの2日目のカレーだから。」
一晩寝かせたカレーの味にクォーツがハマって以来、この「お供え」は続いていたのだが、殆どを女神が一柱で食べてしまう事から連絡があるかどうかで作る量がかなり変わるらしい。ただ、光の脳内では解決方法が皆無だという訳では無かった。
光「まぁうちの場合、ガルナスに食べさせれば何とかなる話なんだけど量が量だから急いでお米を炊かなくちゃ。」
ガルナスの胃袋は本人の成長と共に発達しており、それと同時に日に日に食欲も増すばかりであった。しかし、光の考えは甘かったみたいだ。
ガルナス(メッセージ)「ママ、今日メラ達とカラオケ行くから夕飯要らないからね。」
光が仕事をしている間に娘から送られていたメッセージを見て母は驚愕していた、でもまだ方法はあるはず・・・。
光「王族の人達が全部食べるかも知れないじゃない、あの人達も食欲は凄いから。」
光は急ぎネフェテルサ国王のエラノダに『念話』を送った。
光(念話)「エラノダさん、今夜カレーはどうしましょうか?」
エラノダ(念話)「ああ光さん、丁度ご連絡を差し上げようとしてたんですよ。実は今夜、ダンラルタからデカルト国王一行がこちらの王宮に来るので光さんのカレーを出そうと思ってたんですが大丈夫でしょうか?」
これはかなりのラッキーだ、隣国の国王(と言うよりコッカトリス)は食欲旺盛の為に助かる。
光(念話)「あの・・・、実は・・・。」
恐る恐る、事情を説明するとエラノダは快く了承してくれた。流石は一国の国王だ、心が誰よりも広い。ただ問題はそこでは無かった、何の為に神を呼び出したかを全員が忘れかけていたのだ。
美麗「ねぇ、安正の事を聞くんじゃ無かったの?」
美麗の一言で我に返った転生者達を代表して守が呼び出した古龍に質問した。
守「あの・・・、ここにいる松戸美麗が元の世界にいた時に付き合っていた桐生安正という者が今どうしているか分かりますか?」
クォーツ「ああ・・・、ちょっと待ってろよ。管轄の奴に聞いてみるわ。」
安正はどうしているのだろうか・・・、まさかね・・・。




