570
やっと話が進むよ・・・
-570 神も人と同じなのか?-
『念話』の向こうで恐らく頬を膨らませる恋人を何とか宥めた守は腹違いの姉の案内で家庭菜園(というより広大な畑)へと向かった、年中通して温暖な気候であるが故に時期を問わず様々な野菜が採れる様になっていたこの場所は光本人含めたダルラン家自慢の物となっていたとの事。
光「どう?目的の物は見つかったかな?」
この世界に来た頃に作り始めた畑を踏ん反りがえって自慢する姉の隣でただただ立ち尽くしてしまう弟、下手をすればここに来た本来の目的まで忘れてしまいそうになっていた。
守「目の前の光景が驚き過ぎてそれ所じゃ無いよ、姉ちゃんって凄い人だったんだな・・・。」
光「何よそれ、今更言う事じゃ無いでしょ?」
確かに守は元の世界で「赤鬼」である渚と共に峠を攻めていた場面を目の当たりにしていた頃から目の前の女性の事を「凄い人物」と慕っていた、それが今となっては姉だと発覚した上に広大な畑で沢山の野菜を育てているなんて・・・。
守「そりゃそうだけどさ・・・、姉ちゃん含めてこの世界にいる日本人って凄い人ばかりだなって改めて思ってさ・・・。」
光「何言ってんの、それにはあんた自身も含まれているのよ。」
守「俺が?何で?」
姉の言葉の意味が全く分からない弟、一体光は何を言っているのだろうか。
光「あんたね・・・、日本で死んでから別の世界に飛ばされていたかもしれないのに奇跡的にここに来て好美ちゃんと再会しているのよ。それ以上の凄い事って思いつく訳?」
守「いや俺は・・・、神様に言われた通りにしただけだよ。」
光「「神様に言われた通り」?迷った時の「どちらにしようかな」的な事言わないでよ。」
守「いや・・・、そういう訳じゃ無くて・・・。」
守が姉に「全知全能の神」であるビクター・ラルーから助言を受けた事を伝えようとすると突然全身が痺れ始めて口が動かなくなってしまった、光は目の前で起きた衝撃の出来事に驚きを隠せなかった(そりゃそうだよな)。
光「守・・・、大丈夫?!何があったの?!」
必死に弟の体を摩る姉、しかし弟はピクリとも動こうとしなかった。
光「ちょっと、何があったって言うのよ!!守、ちゃんと説明しなさい!!」
念の為に言っておくが守は「説明しない」のではなく「説明出来ない」のである。
光「創造主ものんのんと言わずにどうすれば良いか教えなさいよ、私の弟を殺す気?!」
あの・・・、お言葉ですがそんなので死ぬわけがないじゃ無いですか。
光「じゃあどうすれば良いのよ、守を元に戻してよ!!」
お気持ちは分からなくも無いんですがね・・・、俺自身がかけた魔法では無いので解決方法が分からないんですよ。助けたいのは山々なんですが・・・。
光「何よ、この役立たず!!」
くそぅ・・・、否定できないのが悔しくて仕方が無い・・・。ただ誰が魔法を掛けたんだよ、正直に言ってくれよ・・・。
声「私だよ、私がやった。用が済んだらすぐに戻すから安心してくれ。」
光「何だ・・・、ギャンブル依存症の神様じゃ無いですか。」
ビクター「「何だ」とは何だ、それに私はギャンブル依存症ではない。」
光「何言ってんですか、競艇で負けたからって冤罪で人から金を没収した時点で十分ギャンブル依存症ですよ。それより、ちゃんと守を元に戻してくれるんでしょうね?」
ビクター「「すぐに戻す」と言っているだろう、ただ少しの間守を貸してくれ。」
光「「タダで」・・・、ですか?確かこの前大穴を当てたってトゥーチ神様からお伺いしましたが?」
光の発言に思わず頭を掻いて悩むビクター・ラルー、神様っても大変なんだな。
ビクター「分かったよ・・・、今度「暴徒の鱗」で酒でも奢るわ。」
光「いやいや・・・、そこはうちの店じゃ駄目なんですか。」
そこ重要?




