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仕事か家庭か
-569 姉弟も男女-
店主として大切な店を守ろうとする旦那と妻の間に殺伐とした雰囲気が漂いそうになっていたがやはりそこは「女は強し」という様にナルリスは一歩下がるしか出来なかったようだ、やはり腹違いではあるが自らの弟の事を必死にフォローしようとする光の想いの方が強大だったと推測出来る。
ナルリス「それを言われてしまうとな・・・、俺だって家族を大切にしたいっていう気持ちが全くないと言えば嘘になるよ?」
やはり目の前で殺された母親や生き別れとなっていた弟の事を考慮に入れるとオーナーシェフ自身が持つ家族への想いは計り知れないと思われる、ナルリスには一歩下がる事以外の方法が無かった。
光「だったら義理の弟の要望に応えてあげたって良いじゃ無いのよ、私間違った事を言ってる?」
ナルリス「い・・・、いや・・・。光様は間違っておられませんです・・・、はい・・・。」
意表を突かれた発言にどうする事も出来なかったヴァンパイアは少し落ち着く為にグラスを1つ取り出して水を飲む事にした、その間に光は守に目的の詳細を聞こうとしていた。
光「守君、あのさ・・・。」
守「光姉ちゃん、もう「守君」はやめてくれよ。他人同士みたいで何か嫌なんだけど。」
つい先日発覚したと言っても2人は姉弟、少しでも互いの距離を縮める事が出来たらと呼び方を変える事から始める事にした守。
光「じゃあ・・・、守?」
守「な・・・、何・・・?ね・・・、姉ちゃん?」
光「もう・・・、あんたも人の事言えないじゃ無いのよ。」
元の世界にいた頃からの「初恋の人」を改めて「姉ちゃん」と呼ぶ事に少し抵抗があったみたいだが何とか仲良く出来そうな気がした弟、これをきっかけに家族同士での絆が深まれば良いなと個人的には願っているのだが・・・。
光「えっと・・・、何となく創造主が「初恋の人」って言った様な気がするんだけど気の所為だよね?」
守「い・・・、いや・・・、俺は聞こえなかったから気の所為だと思うよ。それより創造主、俺は姉ちゃんと仲良く出来ないって言いたいのかよ。」
いや・・・、あのですね・・・、何と申しますかね・・・。やはり姉弟と言っても男と女ですから先程の様に色々とすれ違う事だってあるじゃ無いですか、実際俺も姉がいる人間ですから何となく分かるんですよ。
光「それはアンタの性格が悪いだけで私達は大丈夫ですぅ、そうよね?」
守「う、うん・・・、そうだね・・・。」
光「何よ、今の意味深げな間は。プロレス技かけて欲しい?」
ほら・・・、そんな事言うから弟さんが委縮し・・・、ってお前何ちゅう顔してんねん!!
守「えっと・・・、久々に鍛えて頂きたいと思っていたので稽古をつけて頂けたらと。」
あらら・・・、すっかり「満更でもない」って顔をしちゃってるよ。こんな所を好美に見られたらまずいんじゃねぇの?
光「そうよね・・・、好美ちゃんが守の事を心配して待ってるかもしれないからやめとくわね。偶にはアンタも良い事言うじゃないのよ。」
恐れ入ります、やはり登場人物の方々への気遣いは大切だと常々思っていますので。
光「何調子に乗っちゃってんのよ、それに薄っぺらな嘘言わないの。」
守「そうだぞ、お前はただ話を円滑に進めたいだけだろ?」
おいおい、まさか「プロレスごっこ」が出来なかったから反撃して来るつもりか?
守「馬鹿!!何言ってんだよ!!そんな訳無いだろ!!」
するとなかなか帰って来ない守の事を心配してずっと『探知』していた好美から『念話』が・・・、何となく嫌な予感しかしない(修羅場ですか?)。
好美(念話)「ちょっと・・・、こっちはずっと心配してたのに何馬鹿な事言ってんの!!」
あちゃぁ~・・・




