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メラルークは「テーマ」をどうするのか・・・
-567 空気読もうよ・・・-
マーマンは返答に困っていた、まさか「Yes」か「No」で答える様な質問に「質問」で返して来るかと思わなかったからだ。ましてや普段は料理を提供する立場なので審査員として「テーマ」などを与えた事など長年生きてきた中で1度も無い、ただ「自ら発した発言の責任はしっかりと取らないといけない」と目の前の光景をじっと見つめていた。
メラルーク「うーむ・・・。」
ケデール「マリン、無理しなくても良いんだぞ?駄目そうなら辞退した方が良いんじゃ無いか?」
メラルーク「いや構わない、俺が言い出した事だしお前が信用して店に出している守君の料理を是非食べてみたい。」
ケデール「だったら俺の店に惣菜を買いに来れば良いじゃ無いか、お前なら割引してやるし別注も承るぞ?」
メラルーク「悪いがそれじゃ駄目なんだ、「守君を大切にする人」の為を思って守君自身が作った料理が食べたいんだ。申し訳ないが俺の我儘を聞いてくれるか?」
メラルークの目は至って真剣だった、親友であるライカンスロープも流石に止める訳にはいかないと思ってしまった様だ。
ケデール「分かった、お前がやりたいようにやれば良い。俺は決して止めはしない。」
メラルーク「悪いな、恩に着るぜ。」
ケデール「ただその代わり今度のダンラルタのG1に行く時はちょっとばかし・・・。」
メラルーク「それとこれとは話は別だ、そんな簡単に金を借りようなんて思わない事だな。」
ケデール「何だよ・・・、まだ何も言って無いだろうが。」
メラルーク「どうせお前が言おうとしている事なんて分かるさ、何年お前の親友をやっていると思うんだ。」
ケデール「・・・、そうだな。それは決して忘れてはいけない事だな。」
獣人達の間に良い雰囲気が漂っていたがそれはすぐにでも打ち砕かれた、いとも簡単に。
好美「そんな事言って、本当はマルウさんに「金を貸すな」って止められてるだけでしょ?」
メラルーク「好美ちゃん・・・、何でそれを知ってんのさ!!」
好美「この前ケデールさんがネフェテルサ競艇場で遊んでいる間に2人で呑んでいたら言ってくれたんです、私とマルウさんの間柄なんで十分あり得る事なんですよ。」
ケデール「おいおい・・・、好美ちゃんって俺の嫁とどんだけ仲が良いんだよ・・・。」
ケデールが頭を抱える間にもどうやらマーマンは先程から熟考していた「料理のテーマ」を決めた様だ、親友のお陰(?)で十分な時間を稼げたとの事だがどんな物にしたというのだろうか。
メラルーク「さて・・・、本題に戻りましょうか。守君、君に作って頂く「料理のテーマ」は「思い出と感謝」です。この2つから思い浮かんだ料理を1つで構いませんので作って頂きましょう、今回は買い出しの必要もあるみたいなので時間無制限とします。」
守「「思い出と感謝」ですか・・・。」
提示された「料理のテーマ」を繰り返しながら自分の服の袖をずっと掴んでいた恋人の顔を見つめ直した守、そのすぐ傍では未だに好美がうるうると目に涙を浮かべていた。
好美「どう、守?作れそう?」
恋人の表情を見てほくそ笑んだ守、この表情から見るにテーマを聞いた瞬間から何を作るのかを決めていた様だ。
守「大丈夫、少し時間が掛かるかも知れないけど大丈夫そうだ。」
自信に満ち溢れた表情を見せた守は念の為に肉屋側の魔力保冷庫(冷蔵庫)の中身を確認しに向かった、すると先程までの自信が一気に打ち崩された様だ。
守「本当に・・・、何も無いじゃん・・・。」
ヤンチ「だから言っただろう、あの様な場でどうして嘘をつかなきゃいけないんだよ。」
一方、「暴徒の鱗 ビル下店」の調理場では・・・。
好美「何で?!何で食材が何も入って無いの?!」
ため息をつきながらオーナーの質問に答える店長、何となく理由は想像出来るが一応聞いておこうか。
デルア「何言ってんの・・・、全部好美ちゃんが食べちゃったんじゃない。」
好美「えっ・・・、えっと・・・、アハハ・・・。」
誤魔化せてませんよ・・・