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守はどうするべきなのか・・・
-566 怒りによる困惑と選択による未来-
守は兎に角困惑していた。酔ってはいるものの目の前にいる恋人が自分の為に怒り、そして涙を流しているのだ。
守「水でも飲んで少しは落ち着けよ、やっぱりピューちゃんの言っている通り呑み過ぎだ。」
好美「守はあんな事言われて悔しくないの?!あんなのどう考えても挑発だよ!!」
守「待てよ好美、さっきメラルークさん本人が「そう聞こえていたのなら謝る」って言っていたじゃねぇか。「挑発」っていうのは勘違いなんだよ、言葉を間違えてしまっただけだから安心しなって。」
何とか好美を宥めながらも守自身は困惑していた、ただ今の状況を打開できるのは他の誰でも無く自分だけだ。それにいつも自分の家庭料理を嬉しそうに食べてくれている恋人が必死にそれをアピールしようとしてくれている、決して好美の行動(気持ち)を無駄にしてはいけない。
好美「守、今こそ全力を出す時だよ!!メラルークさんの「挑戦」を受けてよ!!」
ケデール「好美ちゃん・・・、だからマリンは違うって・・・。」
好美の言葉を訂正しようとする店主の言葉を止めたのはまさかのマーマンだった、これは飽くまで推測だが自分の言葉に責任を持とうとしたのだろう。
メラルーク「待てケッちゃん、ここまで来ると好美ちゃんの為に「誰が」「どういった行動を」取るべきか分かるだろう。守君、折角の機会だから店の味に頼らず君自身の実力での料理を味わせてくれるかい?勿論好美ちゃんが言った通り、この事を「挑戦状」や「挑発」と捉えてくれても構わない。」
メラルーク自身は優しくしく言っているが隣にいるケデールは賛同できそうに無かった。「C’ s キッチン」に豚肉を卸している業者の1人として、そして友人としてメラルーク本人が味にどれ程厳しい者なのかを知っているつもりでいたからだ。
ケデール「守、どうするかどうかを決めるのは君自身だ。悪いがこの場において俺は何も言わない、いや発言権が無いと言っても良い。君自身が1番納得出来る返答を出しなさい。」
少なくとも店主にこんな事を言われたのはこの世界に転生した直後に出逢って以来初めてだったのでは無かろうか、「自分の作るただの家庭料理が味にうるさい飲食店の店主に通用するのだろうか」と不安になっていた。
ケデール「マリン、やっぱりまずかったんじゃ無いか?守がこんなに頭を悩ませている所を見るのは正直言って初めてだぞ。」
メラルーク「俺も発言を撤回したかったさ、ただここまで来てしまうとなかなか後には退けないじゃ無いか。初対面だから全てを分かり切っている訳では無いけど恐らく好美ちゃんは意見を曲げるつもりは無いんじゃないかな。」
確かにそうだ、ここまで来なくても好美は言い出したら誰が何と言おうと聞こうとはしない。やはり唯一この状況を打開できるのは守だけだと言っても良いだろう。
それから数分程守は熟考していた、この後の自分の言動によっては下手をすれば将来が大きく変わるかも知れないからだ(・・・と俺は思っているのだが)。
守「あ・・・、あの・・・。」
少し緊張していたからか、守は言葉を詰まらせながら話しかけた。
メラルーク「どうしたの?やっぱりやめておく?」
守「いや・・・、あの・・・、「料理のテーマ」を頂けませんか?」
まさかの返答に驚きを隠せなかったのはこの世界でずっと守の事を見て来た店主だった。
ケデール「守・・・、本当にやるのか?」
守「やらせて下さい店長、これは俺自身の戦いなんです。」
目の前にいる従業員は恐らく誰の力も借りずに成長しようとしている、これはいくら店主だとしてもケデールには止める権利が無い。
ケデール「分かった・・・、お前がそこまで言うならやってみろ。冷蔵庫の食材なら何でも使ってくれても構わないから。」
好美「こっちも使って良いよ、オーナーの権限で許可してあげる!!」
ただ2人の発言は店内から同時に飛んで来た『念話』によりあっさりと打ち砕かれた。
デルア・ヤンチ(念話)「あの・・・、すみませんがもう在庫が無いんですけど?」
何ちゅうタイミングやねん・・・




