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守に惚れすぎやろ
-563 プロフェッショナル-
『瞬間冷却』の話題で娘がネフェテルサ王国一のビルの所有者と盛り上がっている中、父親は炎天下の下でこんがりと焼かれていく焼き鳥を未だにじっと見つめていた(※因みに時間が経過により酔いが少し冷めている様だ)。
守「すみません、大分お待たせ致しましたので俺の方から1本サービスさせて頂きます。」
一応供述しておくが守はあくまでいち従業員であるのでそこまでの権限はないはずだ、これに関してはケデールに連絡しておいた方が良いのでは無いかと思ってしまう。
メラルーク「別に構いませんよ、守君が悪い訳じゃ無いでしょう?」
守「いや、それでは俺の気が収まりませんから1本奢らせて下さい。ご注文をいただいてから20分もお待たせしてしまったので「流石に悪い」と思いまして。」
メラルークが守に焼き鳥の注文をした時には既に焼き始めていたので「あれから20分」ということはかなりの本数を焼いていたと思われる、正直言って結愛はここでの飲み食いをどれだけ楽しむつもりなのだろうか。
メラルーク「あれからずっと塩味の焼き鳥を焼いていたみたいですが塩だれは足りているんですか?もし無くなりそうでしたら私の分の塩焼き鳥を全てタレ味に変えても良いんですよ?」
守「いえいえ、お客様にそこまでお気遣い頂く訳にはいきません。それに塩だれもまだ十分な量がありますのでご安心下さい。」
メラルーク「そうですか、流石ですね。では席で呑みながら楽しみに待っていますね。」
そう言うとニコニコしながら好美とピューアが呑んでいるテーブルへと戻ったメラルーク、守はそれを見てホッとした表情を浮かべていた
好美「お帰りなさい、あれからずっと守が串を焼く姿を見ていたんですか?」
メラルーク「そうなんです、プロフェッショナルの手捌きについ見惚れてしまいましてね。」
好美「えっ・・・、「プロフェッショナル」ってどういう事ですか?」
マーマンが言った事が全く分からない好美、まぁ守が普段何をしているのかを知っているから当然の事か。
メラルーク「いや、「焼き鳥を焼くプロフェッショナル」でしょう?」
焼き鳥の修業は「串打ち3年、焼一生」という様に技術習得に時間が掛かる奥深い世界だ、正直言って守にその様な間があったとは到底思えない。
好美「確かに守は家庭料理が得意ですが・・・。」
メラルーク「「家庭料理」ですか・・・、因みに何が得意だとか言っていましたか?」
好美「「豚の生姜焼き」ですかね、家でよく作ってくれますので。」
メラルーク「好美ちゃんのおうちでね・・・、それってどう言う事ですか?」
すると父親の方をポンポンと叩いて耳打ちした娘。
メラルーク「あ・・・、そういう事なのね。鈍感ですみません、そりゃあ毎日守君の料理が食べれる訳だ、羨ましいなあ・・・。」
好美「でしょう?もうご飯やビールが進んで進んで仕方が無いですよ。」
酔った勢いを借りて自慢げに語る好美、それを肴に持っていたジョッキのビールがどんどん進んでいた様だ。
メラルーク「それでなんですけど・・・、守君は本当に焼き鳥のプロフェッショナルじゃないんですか?」
好美「勿論です、普段は豚舎で働いていますから。」
メラルーク「豚舎ですか?!もしかしてケデールの店で売っている豚は彼が育てているという事ですか?!」
驚きの表情を隠せないメラルーク、それはどういう意味なのだろうか。
好美「あの・・・、おーい・・・、大丈夫ですか?」
マーマンの目の前で何度も何度も手を振る好美。
メラルーク「すみません、実は豚肉の仕入れ先を開拓しようとケデールの店に売っている豚肉を試食した時に感動を覚えていまして。」
好美「成程ね、やっぱり私の彼氏は天才だね。えっへん!!」
ピューア「もう・・・、何であんたが踏ん反りがえってんのよ。」
どて!!




