562
時間の無駄だったか
-562 能力による支障-
上級人魚をズッコケさせながらも何とか聞こうとしていた質問を思い出そうとしていたマンションの大家兼「暴徒の鱗 ビル下店」オーナー、まぁ時間はたっぷりあるはずだから気長に行こうでは無いか(どうせ急いだって全員酒が入ってしまっているからどうにでもなれって奴だよ)。
好美「そうそう・・・、やっと思い出した。」
ピューア「本当に?本当に思い出した?」
好美「何で疑うのよ、酷いよ。」
ピューア「そんなつもりは無かったのよ、ごめんって。」
誰もが何処からどう見てもピューアが好美の事を疑っている様にしか見えない状況だがこのまま行けば場の雰囲気がかなり悪くなる予感がするので今は好美を宥めるのが最優先と思われる、ただ宥めている間に好美本人が質問を忘れてしまうと元も子もない。
好美「まぁ良いけど、一先ず気になっていた事を聞いても良い?」
あらら、意外と心配なかったみたいだ。
好美「ねぇ、「意外と」ってどういう意味?もしかして私の事面倒な女だって思ってる?」
何を仰っているんですか・・・、その様な事など微塵も御座いません!!
好美「だったら良いんだけどさ、一先ずお代わり貰おうかな。」
残っていたビールを呑み干して持っていたジョッキを水路へと投入した後にタッチパネルでお代わりを注文する好美、一体どれ位呑むつもりなのだろうか。
(どうせ見えて無いだろうけど)ため息をつく俺をよそ目に未だにメラルークがガン見している守の方へと目をやった好美、どうやら恋人の料理が恋しくなって来た様だ。
好美「はぁ・・・、私も守の焼き鳥が食べたくなって来ちゃったな。」
そんなこんなで『転送』されて来たお代わりを手に取って一気に煽った好美。
ピューア「どう?落ち着いた?」
一気に息を吐いた様子から目の前にいる同僚の心中を察したニクシー。
好美「うん・・・、何とかね。それでなんだけど。」
やっと本題ですか、長かったな・・・。
ピューア「ん?どうした?」
好美の気が変わらない様に気遣いながら質問を聞き出そうとするピューア、これは作戦成功か?
好美「あのね・・・、さっき使っていた能力って触るだけで発動されちゃうの?」
ピューア「ううん、そんな事ないけどどうして?」
どうやら好美は業務を行う上での弊害になり得ないだろうかと心配していた様だ。
好美「いやね・・・、単純な事なんだけどもしそうだとしたらピューアの場合はラーメンを茹でるお湯やスープがすぐに冷めちゃうだろうし、メラルークさんだったら油の温度が低くなり過ぎて揚げ物が出来なくなっちゃうだろうから仕事にならないんじゃないかなと思ってさ。」
ピューア「あらま、私達の事を心配してくれてたのね。でも大丈夫、好美達が『瞬間移動』を使うのと同じ感覚で使おうと思わなかったら発動しないから安心して。それにもしそうだとしたら仕事だけじゃ無くて生活にも支障が出ちゃうわよ。」
好美「「生活に」?何で?」
「全くもって意味が分からない」と言わんばかりの様子の好美。
ピューア「もしもそうだったら折角師匠に貰ったスルサーティーが動かなくなっちゃうわよ、それに家でも作れる料理が限られちゃうしね。でも魚などの食材を鮮度を保ちながら下拵えできるっていう良い所もあるんだけどね。」
好美「成程ね・・・、だからピューアは魚の調理に長けているんだ。」
ピューア「いや、そういう訳じゃ無いんだけど。」
ピューアの場合は板前の修業をしていたか・・・、って聞いてないか。
寂しい・・・




