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今は「奢り」って言葉が禁句である
-560 酒好きが欲しい能力-
一先ず守がビールを1本奢るという形で貝塚財閥代表取締役社長を宥めた事で一先ずこの場は治まった(勿論好美には内緒で)、ただ今回はいつもと多少であるがある意味大きな違いがあった様だ。
結愛「すげぇ・・・、ですね。思った以上にキンキンに冷えているし泡がまろやかで柔らかいです。」
メラルーク「いかがでしょうか、我々魚人族も馬鹿に出来ないでしょ?」
守が結愛に手渡した生中にメラルークが魚人族の特殊魔法である『瞬間冷却』を施して凍る寸前(氷点下)の温度にまで冷やしていた、そのお陰で満足度が上がっていた様だ。
結愛「そんな・・・、私がいつ魚人族の方々を馬鹿にしたと仰るんですか?」
これに関しては恐らく問題は無い、というより結愛は種族関係無く住民全員を大切にしているので今更言うまでもない(特に学生や生徒)。
メラルーク「すみません・・・、調子に乗ってしまいまして。」
結愛「いいえ・・・、お気になさらないで下さい。」
やはりビジネス絡みでの場だからか、それとも有名人である「結愛社長」がいるからか会話に多少の緊張感を感じる。
しかし・・・、数分後・・・。
結愛「何だよ、あんたも堅苦しいのが苦手なんかよ!!早く言えよな!!」
メラルーク「馬鹿野郎め!!すっかり有名人になっちまっているあんたに声をかけるだけでも烏滸がましいと思っていたのに、んな事出来る訳ねぇじゃねぇか!!」
すっかり酒が回ってしまったのか結愛は「(通常通りの)悪ガキモード」に、そしてマーマンはまるで江戸っ子(?)の様な口調になっていた。
結愛「それにしても良いのかよ、数回しかあった事無いのに奢って貰ってよ!!」
メラルーク「気にすんなってバーロー、いつも米を無料で持って来て貰ってんだからお礼位させろって!!それに・・・。」
結愛「「それに」・・・、何だよ!!」
それから数秒程の間、何も言わずずっと沈黙を貫いていたメラルーク。
メラルーク「「江戸っ子は宵越しの銭は持たねぇ」ってのよ!!」
何処かで聞いた事のある様な台詞だが(権利的に大丈夫か?)、江戸(東京)どころか日本にすら言った事の無いであろうメラルークがどうしてそんな言葉を知っているのかが疑問に思えてならない。しかし・・・、約1名はにとってはそんな事などお構いなしであった。
結愛「言ってくれるじゃねぇか、じゃあ今夜はあんたの奢りでの無礼講って奴で良いんだな?!」
メラルーク「あたぼうよ、「武士に二言はねぇ」ってんだ!!」
「江戸っ子」やら「武士」やら・・・、キャラが渋滞しそうなんだが今はそれ所では無いのかも知れない。理由は1つだけ、最低でも結愛は分かっているはずなのだが・・・。
好美「「奢り」?!今「奢り」って聞こえたけど!!」
先程からずっと呑んでいたのにも関わらず、相も変わらずの(特に「奢り」という言葉に敏感な)地獄耳を発揮する好美が近付いて来た・・・(俺知らねぇからな)。
ピューア「好美、ちょっと落ち着きなよ。まだ目の前にビールがあるじゃないの。」
好美「やだ、ただで呑めるチャンスを見逃すだなんて事は絶対したくないの!!」
念の為に確認しておくが好美とピューアの目の前に並んでいるビールは全てメラルークの奢りによるものである、「もしかして酒が回り過ぎて忘れたのか?」と思っているとどうやら好美個人は明らかな相違点を感じていた様だ。
好美「あっちの方がキンキンに冷えてるっぽいもん、やっぱりビールはキンキンに冷えて無いとやだもん!!」
そうは言っているが大切な事を忘れていないか?あんたの目の前には誰がいるんだよ。
ピューア「好美ったら・・・、私だって『瞬間冷却』位出来るっつぅの!!」
燈台下暗し・・・




