55
美麗は食事を楽しむ事にした。
-55 元の世界からずっと引きずっていた恋心-
デルアによる関西弁での突っ込みから数分後、美麗は注文した料理2品が到着したので炒飯を一口、すると・・・。
美麗「これ・・・、まさか・・・。」
初めて食べたのに、何故か懐かしさを感じた美麗。
好美「分かった?実はね・・・、この「ビル下店」の料理の一部は「松龍」の味を基に私が監修したのよ。」
美麗「うん・・・、パパの味だ!!パパ・・・!!」
2度と味わえないと思っていた父親の作る炒飯の味に再会出来たが故に、嬉しさの余り泣き出してしまった美麗の肩に手を乗せながら杏仁豆腐を勧めた好美。
好美「ほら・・・、これも試してみてよ。」
美麗は手渡されたデザートを口に流し込んだ、やはりこれも・・・。
美麗「あの味だ・・・、ママが作ってくれたあの味だよ!!」
好美「私も好きだったから再現してみたのよ、どう?上手く出来てるかな?」
美麗「嬉しい・・・、ありがとう好美!!」
それから数分程、辺りがほっこりとした雰囲気に包まれている中で拉麵屋のオーナーはある事を思い出した。
好美「そう言えば明日ってバレンタインデーだけど美麗は誰かにチョコをあげるの?」
思ってもいない事態が起こっていたのでチョコの事などすっかり忘れてしまっていた美麗、好美の発言でやっと今日が2月13日だという事を思い出した様だ。
美麗「いつもだったらチョコを持ってかんちゃんのお墓に行くんだけどね、私自身も死んじゃったから出来なくなっちゃった。」
好美「じゃあピューア達も誘って一緒に友チョコを交換しあわない?」
美麗「良いね、その案を採用しよう。」
守「あ・・・、俺ちょっとトイレ。」
元の世界にいた時と同様に楽しく過ごせそうな予感がする中、守が女性2人に気を遣って席を離れた数秒後に予約客が店の出入口にやって来たらしいがバイトは注文を取りに出払っているので厨房にいたデルアが出迎えに向かった。
デルア「いらっしゃいませ、4名様でご予約の金上様ですね?こちらへどうぞ。」
「金上」という苗字を偶然耳にした美麗の心臓が一瞬鼓動を打ったが、気のせいだと思って会話に戻った。
美麗「気のせいだよね・・・、そんな訳無いもんね。」
好美「どうした?何かあったの?」
好美の言葉に我に返る美麗。
美麗「ううん・・・、何でも無い。とりあえず食べ終わったら材料の買い物に連れてってよ、この街を案内して欲しいし。」
予約客「その声もしかして・・・、美麗・・・、いや、「みぃちゃん」か・・・?」
聞き覚えのある声に全身から嬉しさが込み上げて来た美麗、しかし顔を見てみないと確証を得る事は出来ないのでゆっくりと振り向いてみた。
美麗「嘘でしょ?かん・・・、ちゃん・・・?本当にかんちゃん?嘘とは思いたくないけど嘘だと言ってよ、冗談だよね、かんちゃん!!」
奇跡が起きた、目の前にいたのは美麗の目の前でひき逃げ事故に遭ったあの金上秀斗だったのだ。秀斗は美麗の前からいなくなった時のままの姿でその場に立っていた。
秀斗「俺の心臓で生きているはずの美麗がどうして・・・?」
美麗は全てを話した、元の世界であった事やこの世界に来たきっかけを含めて。
美麗「かんちゃん・・・、会えると思って無かった。私、やっぱりかんちゃんが好き。」
秀斗「みぃちゃん、いや美麗。俺も会いたかった・・・、好きだ!!俺達、戻ろう!!」
異世界で再会した2人の恋の行方は・・・。