544
気まずいなぁ・・・
-544 店主と店長-
娘がやっと静寂をぶち破った店内で父親は相手がこの場に来た本来の目的を聞く事に、まさかと思うが若干の気まずさを感じながら持参したロールケーキを食べる事では無いはずだからだ。
メラルーク「それでなんですけど・・・、今日はどの様なご用件で?」
イャンダ「あ・・・、そうでした。申し訳ありません。」
メラルーク「いえいえ、お気になさらないで下さい。」
未だに発揮される人見知りによりどうやって話せば良いのかが分からず、つい言葉を選び過ぎてついつい敬語になってしまう2人。
イャンダ「こちらにお邪魔させて頂いているピュー・・・、アさんの様子を見に来ました。」
ここはピューア本人にの実家なのでどちらかと言うと「お邪魔している」というより「帰ってきている」という方が正しいのでは無かろうか、ただ今は人見知りのお陰でこうなっていると思われるので気にしないでおこう。
メラルーク「そうですか・・・、えっと・・・、娘はピンピンしてますよ。そちらのお店での様子を1度伺ってみたい位ですね。」
イャンダ「良かったです、この研修(?)に向かってから結構な期間が経っているので心配になって来ちゃいまして。」
いくら仕事だからと言ってずっと恋人と離れ離れになっていると流石に心配になってくるのは男としての本能が故である、しかし改めて言うがここはニクシーの実家なのでその心配は無い。
メラルーク「大丈夫ですよ、私や妹のメラがちゃんといますから。」
メラルークのガタイを見ると安心出来るのは納得がいく、ただ今の状況で食べてばかりのメラが頼りになるかどうかは分からないが。
イャンダ「良かったです、お義父さんのそのお言葉を聞けて安心しました。」
メラルーク「何を仰いますやら、それにまだ貴方に「お義父さん」と呼ばれる筋合いはありませんよ。」
少しであるが先程より緊張が解れて来たマーマン、キツめの一言をサラッと言える程になって来たみたいだ。
イャンダ「で・・・、では・・・、「おっかさん」?」
何処かで聞いた事がある件だが違うだろ!!今はボケて良い状況じゃ無いわい!!
メラルーク「ハハハ・・・、まさかこの様な場で冗談をかまして来るとは貴方も図太い性格の持ち主の様ですね。」
敬語を使う事で「俺達の間にはまだ壁があるんだぞ」とアピールするメラルーク、これはいくら優秀な元竜将軍でも攻略は難しい様だ。
イャンダ「いえいえ、お褒めに与り光栄です。」
褒められてねぇのが分かんねぇのかコイツは、お前と目の前の魚人の間にはまだ距離があるって事だよ。
イャンダ「それにこちらに伺ったのはお義父さ・・・、メラルークさんへのご挨拶も兼ねてなんです。」
先程の言葉が効いたのか「お義父さん」と言いかけたのを「メラルークさん」と言い換えたイャンダ、ただ「ご挨拶も兼ねて」と言っていたがそれが1番大切では無かったのだろうか。
メラルーク「わざわざお越し頂きましてすみません、本来はこちらからご挨拶に伺わないといけないのに。」
イャンダ「何を仰いますやら、私は当然の事をしたまでです。」
メラルーク「いえいえ、そんな事を仰らないで下さい。」
イャンダ「いやいや、そちらこそお気になさらず。」
一方は「これから住み込みで働く事になる娘の父親」として、そしてもう一方は「お付き合いしている恋人」として自分の方から挨拶に行くべきだとずっと考えていたので若干のズレがあった様に思えたが大丈夫だろう(多分)。
この件・・・、まだ続くの?




